第10話


「……と言いますか」

「ん?」


「この話の流れだと、空ちゃんも関係者みたいに聞こえてしまいますけど」


「……」

「……」

「……」


 刹那の言葉に、俺以外の三人は「違うの?」と言いたそうな表情をしている。ただ、俺もそんな顔にまでは出していないが、薄々話の流れからそう感じていた。


「まぁでも、その張本人から何も言われていないし。なんとも言えないよね」

「それ以上に感情が乏しいので」

「たっ、確かに……そうだね」


 そもそも俺が空の事をあまり知らないという事と、感情が乏しい事も相まって、空の真理……いや、空の事は未だに分からないままだ。


「……乏しい?」

「えっ?」


 しかし、実苑さんは俺たちとは違う反応をしている。どうやら、聡さんも同じように不思議そうな表情だ。


「いや、あれは乏しいというよりも……」

「ああ、あれは……失った……という感じがしたのだが」


「…………」

「…………」


 言われてみると……という感じもする。


 ただ、俺はカードがバラまかれる前に会った人間だが、あの時はまともな会話は何もしていない。


 刹那に会った時はもうすでにあの状態だ。分かれという方が難しいかも知れない。でも、そんな事を聞いてしまうと……。


「…………」

「…………」


 俺と刹那が言葉を失っていると、すぐに実苑さんと聡さんは「いっ、いや俺たちが思うに……だよ?」とか「気にするな」とか色々フォローを入れてくれたけど……。


 ――ただやはり「気にするな」と言われて気にならないわけがない。


「まぁ、今はともかく! 本人がいないところ、しかも臆測だけで話を進めるわけにもいかない。とりあえず、当面は瞬たちに『カード集め』を頑張ってもらうしかないね」


「え?」

「どっ、どうしてですか? 大体の事が分かってきたのに……」


「うーん、刹那君のその気持ちも分かる。でも、あの人たちが表立って動く……という事は、現状考えにくい」

「せいぜい俺の失敗を出来るだけ大事おおごとにして、後は雲隠れ……というところだろう」


「まぁ、そうさせないために、君をここに連れて来たんだけどね」


「ありがとうございます」

「いや、そこは瞬に言ってね。瞬が『警察に言う』って言ったら、そこでアウトだったんだから」


「…………」

「…………」


 どうやら俺たちが相手にしているのは、思っている以上の人たちの様だ。


犯人やっこさんが……特に大物は、最後の最後まで出てくる事はないだろう。僕たちが相手にしようとしているのは、そういう人たちなんだよ」


兄さんの静かな声に、俺たちは全員。息をのむのだった――。


■  ■  ■  ■  ■


「――よろしいのですか?」

「うーん? 何が?」


「瞬様に生き返らせようとしている『人間について』何も伝えなくて……」


 瞬と刹那を送って帰ってきた宗玄さんから、心配そうな声で聞いてきた。


 さすがに、まだ全てが分かっているわけではないが、大体の事は今のところ掴んでいる。


 それはつまり、計画の一番大事な『誰』という事も知っている……という事だ。


「あー、うん。相手方に不信感を与えるような事はしたくないし、それに何より……」


「……どうかされましたか?」

「いや、なんでもない」


「……左様でございますか」

「うん」


 想は一瞬頭に過った『言葉』をあえて口にはせず、そのまま飲み込んだ――。

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