第13章 海蛇座
第1話
「……」
この日、俺は電車に揺られていた。しかし、これは『新幹線』ではない。
いや、確かに最初は『新幹線』に乗っていた……のだが、今は各駅停車でしかも所々駅員のいない『無人停車駅』もあるよく言えば『レトロ』悪く言えば『古い』電車に乗っていた……。
「うーん……。ふぅ…と」
……結局、あの手紙が届いた事以外特に何もなく無事にこの日を迎えていた。ただ単に運がいいだけなのか……。
はたまた俺の考えすぎなのか……そこまでのことは分からないが、兄さんが俺に何か仕掛けてくることはなかった。
まぁ……、俺みたいな『出来の悪い弟』相手にわざわざちょっかいかけてくるような人間でも……ないな……なんて思いながら俺は窓の外の景色を見ると……。
元々、ただの『捨て駒』に情けとか特に感情を持つような人間では……ないと俺は思っている。
それがたとえ『家族』だとしても、自分が外の世界に出られれば正直、どうでもいいのだろう。
そう思うと、今から会いに行くこと自体気が重い……。
「……っ」
俺は頭を窓に軽く当てて空の景色をさらに観察した。
「はぁ……いい天気だな」
家を出た瞬間は帰ろうかと思ったぐらい微妙な天気だったが……。今は俺の気持ちとは真逆もいいほどに『素晴らしく快晴!』だった。
『……でも、どうやって連絡するの?』
俺の脳裏に過ったのは刹那のこの発言だ……。
今回は手紙が来たことを考えると、どうやら向こうは俺の『住所』が分かっているのだろう。
「ここはやっぱり電話の方が早いだろ」
「電話番号……は?」
ただ俺は……昔の事だった……という事と、あまり気にしたことがなかった事もあって『場所』の雰囲気ぐらいしか覚えてない。
ましてや『電話番号』なんて……覚えていないどころか知らない。
空の言葉が少し足りていない気がしたが、何を言いたいのか分からない……という訳でもない。
「……あの家に『固定電話』は……確か、なかったな」
過去を思い返しても『電話』をかけている姿を俺は一度もも見たことがない。そこで俺は素直にそう答えたのだが…………。
「えっ!」
「マジでっ!?」
刹那と龍紀の反応は俺の予想をかなり上回っていた。そして、その大声に俺は驚いたが、俺はさらに言葉を続けた。
「携帯電話を使っている可能性もあるが……、確かあの家は『圏外』だったはずだから……」
その発言に刹那と龍紀は呆気に取られていた。しかし、俺はむしろ二人の反応に驚いていた……。
「そっ、そんな家……あるんだな」
龍紀の小さく呟いた。
「ひっ、秘密主義とは聞いていたけど……まさかここまでなんて」
「……」
俺としてはこれが普通だと思っていたが……というか、刹那の言い方は若干失礼にも感じる。
でも、なるほど……これが『ジェネレーションギャップ』というやつか……。
なんてと俺は最近『言葉』だけ知り、『意味』を全く知らない間違った解釈をしている……とも思っていない言葉が一瞬頭を過った。
「……瞬。今、意味の全く違う言葉出てなかった?」
「いっ、いや……」
刹那の鋭い質問に俺は言葉少なく否定をしたが、実際のところその通りだ。
でも、なぜかここで肯定するのが正直、面倒であり……何より刹那に負けた気がしてしまった。
「……」
刹那の好きなことで負ける分は別に何も感じない。しかし、それ以外で負けるのは……なぜか許せなかったのだ……そう、なぜか――――。
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