第8話
勉強会を始めてしばらくした頃――。俺はふと時計の方に視線を向けると……。
「……ん?」
ちなみ空は俺たちが勉強をしている間も特に冷やかすこともなく、静かに本を読んでいた。
まぁ、今までの空を見ていれば、彼女がそんな俺の様な茶化すなんて事は……絶対しないだろう。
「どうした? 刹那?」
「??」
俺としては、口に出したつもりはなかったけど、どうやら口に出ていたようだ。
「あっ、いや……瞬。遅いな……って」
「確かに」
「そういえば……そうだな」
二人も時計の方を見ると……そう言った。
でも、本当に珍しい。いつもであれば遅くなるにしても、何かしらの連絡がある。
それも十五分前には連絡があるはずなのだけど……今日は十五分前を過ぎても何もない。
「……どうしたんだろうな」
「うん、携帯にも……」
念のため……と携帯を見たけど……通話もなければメールが送られてきたような形跡もない。
俺の方から連絡を入れてもいいのだけれど……それは時間になっても来なかった時でいいだろう。
「……」
もしかしたら……何かに巻き込まれているのでは……なんて悪い予感が過る。現に今、瞬が置かれている状況は……そんな事に巻き込まれてもおかしくない。
それに元々、瞬自身が色々な事に巻き込まれる事が大半だけど……自分から首を突っ込んでしまう事も……実は結構多い。
俺も『実は……』と告白したが、彼。瞬は前から『見えていた』人間だ。
しかも、彼は真面目な上に律儀なところがある。彼なら「見えている人間だからこそ……」なんて考えるだろう。
その結果……気が付いたら……なんて事もあった。
「何事もなければいいけど……」
「大丈夫……と言いきれないな」
「……」
「でも、空がここにいるのなら『カード関係』って事じゃ……」
「……ないとは言いきれない」
俺の言葉に繋がるように空はそのまま言葉を続けた。
「そっ……そっか」
「うん」
空はサラッとこう断言したけど……ここまで断言されてしまうと……不安も大きくな……。
「ん?」
「チャイム……」
「だな」
そんな俺たちの不安を断ち切る様に玄関のチャイムが鳴り響いた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
急いで玄関のモニターを見に行くと……。
「あっ」
そのモニターに映った人物に俺は思わずホッ……とした。
「わっ……悪い。遅く……なった」
どうやらかなり急いで……というか走って来たらしく『瞬』はかなり息を切らしている。
「はぁ、全く……心配させないでよ」
「ははは、悪い悪い……と龍紀は?」
「もう来ているし、空もいる」
「えっ!? 空もいるのか」
まぁ……そうなるよな。俺もいるのが分かった瞬間、驚いた。だから、瞬の気持ちはよーく分かる。
「まぁ、積もる話も……」
「おい、それは久しぶりに会った……とかに言うセリフだ」
「でも、聞きたい事はたくさんあるから」
「……そうだな」
なんてやり取りをしながら俺たちは龍紀たちが待っている部屋へと向かったのだった――。
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