第2話


 同日の朝――。


 いつもより早く目が覚めたのは瞬だけではなく、刹那や龍紀もいつもより早く目が覚めていた。


 刹那に至ってはいつも遅刻ギリギリなのにも関わらず……だ。


「……」


 どうせなら『休日』の今日ではなく、いつもの『平日』の方が俺としてはありがたいのだけれど……こればかりは仕方がない……目が覚めてしまったのだから。


 それほど『今日』に対して自分でも知らない内に身構えているのだろう。


 チラッと机の上に置いてある携帯電話に視線を送り……そのまま視線を下へと落とした。


「……」


 昨日、神から送られてきたメールの内容から察するに、どうやら『今日』瞬から大事な話があるみたいだ。


 その内容まで詳しくはさすがに分からないけど、多分ここ最近上の空だった事と、『修学旅行中』の事に関する事だ……という事はさすがの俺でも分かる。


 だから、龍紀に今日は一時間早く家に来るように昨日のうちに提案しておいたのだ。


 もちろん、龍紀は二つ返事で「了解」してくれたが、そもそも今日の『勉強会』は『俺のため』ではない。


 確かにいつもの『勉強会』は『俺のため』という色が強いが、今回は違う。そもそもこの『勉強会』に龍紀が来るのは初めてだ。


 それはもちろん部活動が忙しいとか生徒会の仕事があるから……とか色々理由があるからだけれど、今回は龍紀から「来たい」と言った。


 元々『勉強会』の話はよく話題に出していたから知っていたとは思う。でも、龍紀から言われたのは初めてだ。


 たぶん、それだけ龍紀も瞬を心配しているのだろう。


「…………」


 問題はあの『星川ほしかわそら』と名乗っている少女だ。


 どこに住んでいるのかも連絡先も……その素性に関することが何一つ分かっていない。


 正直、たった一言『謎』と言ってしまえばそれっきりだけど、今のご時世。あんまり人を安易に信じるのは危険だ。


 それに……信じて傷つく姿を見てもあまり気持ちのいいモノではない。


「自分自身だったら……まだ耐えられるけど……」


 ましてや家族や友人ともなれば話は別だ。


 しかし……あの修学旅行でたまに一緒に行動していた母さんにでさえ、あの少女には『兄弟がたくさんいる』というぐらいの事しか話していない。


 確かに母さんはグイグイと人に色々話を聞くタイプではないけど、聞き上手だ。そんな母さんに対しても……という事は、よっぽど話をしたくないのかも知れない。


 いや……他にも何か『理由』があるのかも――。


「……」


 まぁ何にしても、瞬からどんな話をされたとしても俺はそれを受け止めようと思っている。


 たとえそれが……瞬の隠したい暗い過去だったとしても――。

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