第12章 蟹座

第1話


 朝――。


「……」


 なぜか……。


 いや、理由は分かりきってはいるが、今日はいつも以上に早く目が覚めてしまった。昨日は神に会って食事をして帰ったが、その後もなかなか寝付けずにいた。


 それなのにも関わらず……である。


「……」


 眠いのに二度寝も出来ない。目を閉じても……全然寝付けそうにない。それだけ、刹那たちに『自分の事』を話したくないのだろう。


「はぁ……」


 自分の事なのに……どこか他人行儀な自分がいる。そんな自分がつくづく嫌になる。


 そもそも……今まで一度も聞かれなかった事が不思議ではある。ただ、もしかしたら刹那は俺に気を遣ってくれていたのかも知れない。


 いや、刹那もあの時は大変だったから……それどころではなかったのだろう。


「……」


 元々、刹那は人見知りかつ引っ込み思案だった。


 そんな刹那が俺に憧れを抱いていたのは驚きだったが、そもそもあいつがこの間話した『トラウマ遠足』の時には、だいぶ仲良くなった頃の話だと思う。


 ただ……本当に仲良くなったのが『なんだった』のか……実はあまり覚えていない。


 龍紀にしてもそうだ。部活動に生徒会の仕事……そして日頃の勉強と大変なのに俺の心配までしてくれている。


「……」


 このままゴロゴロしていてもただただ時間が過ぎるだけだ。


「仕方ない。起きるか」


 約束の時間にはまだまだ早い……どころかいつも起きる時間よりも一時間早い。


「はぁ」


 深くため息をつきながら、俺は洗面所へと向かったのだった。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「あー……ん」


 いつもより早く起きてしまった事もあり、朝食の時間もいつもより早い。


 ただまぁ、いつも朝食は適当にパンを焼いて適当に『サラダ』と称して野菜をブツ切り、もしくは千切ったモノをお皿に並べただけのモノを食べている。


 昼食もお弁当を持っていく事もあるが、大体買い食いする事の方が多い。


 正直なところ、最初の頃はお弁当を持って行っていたのだけれど……刹那に茶化されて最近は週に一回くらい程度だ。


 龍紀とか運動部に入っている人たちはお弁当とパンなどの買い食いを両方している。


 そんな彼らの食欲が……たまに羨ましくも……思ってしまう事がある。


「まだ、時間あるな」


 食べ終わった食器を片付け、チラッと時計を見ると……集合時間までにはまだ時間に余裕がある。


「……ちょっとやっておくとするか」


 昨日は結局のところ、宿題を少ししかする事が出来なかった。でも、今から始めれば少しは進める事が出来そうだ。


「よし」


 そう言って俺は準備を終えたカバンを横に置き、宿題をやり始めた……が、宿題に集中しすぎてしまったせいでマンションを出たのは、約束に間に合うギリギリ時間だった――。

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