第2話
「…………」
俺は正直焦っていた……。
でも、改まって「何が?」と聞かれると、具体的には答えにくい。瞬と刹那の友情の話。それを聞く前から元々あった俺の中にあった『焦り』の様な感情。
それらが日ごろの勉強や部活動、生徒会活動によるものではないことは自分でもよく分かっていた。
それでも具体的な『その焦り』が何かまでは……自分自身ではよく分かっていなかった……。そして、この間の話でなぜこんなにも自分が焦っていたのか……今になってようやくそれが分かった気がした。
だって……俺はまだ、瞬と刹那と会ってちゃんと話して間もない。いや、それは当然か……それでも……と欲深く思ってしまうのは「人間の悪い所だ」と俺は思っている。
しかし、この間刹那の家で会った『星川空』も自分の立ち位置を理解して会話に入っていた。
それが、俺の中にあった『焦り』を加速させた。
「……はぁ」
「おーい、あんまり先に行くなよぉ」
ため息とほぼ同時に聞こえた声に片手を挙げ、返事をしたが、俺の心はここにあらず、本当にダメな人間だ……。俺は……なんて考えていた。
今、目の前にその年下の女の子がいれば、思わず当たりそうになってしまっている自分にため息が出てしまう……。
ただ『自暴自棄』というまでは行っていない……はずだ。
しかし、俺はこれからの瞬と刹那とどう接すればいいのか……顔を会わせればいいのか……正直、分からなくなっていた……。
「……あれ? ……ここ……どこだ?」
ふと気が付くと、俺は神社の敷地内ではあるものの、ここがどこか分からない程『目印』も何も無いところに立っていた。
「しっ、しまった……」
俺は昔から考え事をしながら行動すると、周りが見えなくなる傾向にあった。
今まではそうならない様に目の前の事を必死にしてきて、この『悪癖』とも呼べる『癖』は出ていなかったのだが……。
「はぁ、なんでよりによって……」
瞬や刹那の事を考えてしまったせいでどうやら横道に反れてしまっていた様だ。
「……」
しかし、生徒会長でありながら集団行動から外れて迷ってしまうなど……あってはいけない。
「はぁ……」
とりあえず、マップか目印になるところで誰かに……と、そこで俺は一瞬ためらった。
その『誰か』という言葉に俺は『……一体、誰に?』と自問自答した。
正直、誰でもいい。副会長は俺と同じ部活動の奴で同級生だし、瞬や刹那も連絡先は知っている。その中の誰でも連絡してもいい。
「……」
でも、なぜか俺は連絡するのをやめ、歩き出した……本当に、今となってもどうしてそんな事をしたのか……なぜかは分からない。
「あっ、あの……龍紀さん」
「?」
俺は突然呼び止められ……その声に実は聞き覚えがあった。
「あっ、君は……」
振り返った視線の先の……岩の上に『星川空』が立っていた――――。
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