第2話
「えーっと? つまり、完全に俺のせいっ!?」
「もっと元を正せば刹那があの場にいれば……ってことになるが……。まぁ、俺があの草原に行かなければ空はここにはいないんだから……そうだろ」
俺は思い出す様に言った。しかし、龍紀は話を聞きながら答えた。
「でも、カード探しをしなくちゃいけなくなったのは完全に自業自得だけどな」
「……うん」
龍紀の言葉に「その通り……」と言っているかのように空は首を大きく縦に振っていた。
「それは反省している……」
しかし、空と話すようになった今となっては俺の女性に対する対応が幾分かマシになった……というのは、俺にとってはちょっとしたいい産物を得ることが出来たと思っている。
「で、このカードってなんだ?」
興味津々といった顔で刹那と龍紀は空の本を見た。
「良くも悪くもすごい力を持ったカード……そのカードには星座の『由来』とされた姿が書かれたいる」
その説明を聞いた瞬間、刹那は首をひねった。
「どうした?」
「いや、俺が『兎座』のカードに気づいた時に兎は見なかったぞ?」
「そりゃあ、刹那は見えないんだから分からないだろ?」
「……」
「……」
俺は当たり前の様に答えた。
「刹那? どうした?」
なぜか俺が「刹那は見えないだろ?」と言うと、なぜか刹那は気不味そうにずっと黙っている。
「あっ、えと……」
しかし、それに反して落ち着きはない。なんというか……。言いたいけど、言えない……という表情をしているのだ。
「……」
そんな風に見えていたが、どうやら吹っ切れたよう……というよりもついに決心した様に顔を上げた。
「…………瞬、俺は……瞬に言っていなかったことがある」
「………………」
いつもの俺だったら刹那の言葉に対し、すぐに返事を返すのだが、この時の俺は何も言わずに無言で頷いた。
「…………」
それから刹那は呼吸を整えた。
「……実は……俺にも……見えるんだ。それに……」
そう言って刹那は眼鏡を取った。
「俺、実は目も悪くない……。俺は今まで……ずっと嘘をついてきた。言えなくて……言わなくて……ごめん……」
刹那はそう言って涙をためた目で俺を見た後、深く深く……頭を下げた。そして、頭を下げたとほぼ同時に一筋の涙が、刹那の顔を流れた―――――。
「………………」
そんな刹那を俺たちは黙って見ている事しか出来ない……という訳ではない。
空も龍紀もあえて何も言わなかった。それは多分、俺が刹那に向かって何を言うのだろうか……と気になっていたのだろう。
「……」
「まぁ、話は分かった。だから、泣くのは止めてくれないか?」
とりあえず、刹那の頭を上げさせ、涙を拭う様に近くにあったティッシュを渡した。
「……本当に? 許して……くれるのか?」
「許すも何も、見えるかどうかなんて本人の自己申告だからな……。こればっかりはなんとも言えない」
「そりゃあ、そうだけど……」
「まぁ、でもよかった。俺のせいじゃなかったんだな……」
俺は誰にも聞こえないような小さな声で無意識に呟いていた。
「なぁ……結局、何があったんだ?」
「あー、えっとだな……」
龍紀は重々しい空気からやっと解放された様なため息と表情でで俺たちに尋ね、空もそれは気になる様で大きく頷いた。
「……」
「はぁ」
そして、俺は死を初めて覚悟した『あの事』を話し始めた――――。
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