第7話
「あれ? 瞬? 珍しいね、こんな朝早くに」
「ん? ああ……ちょっとな」
小林……いや、龍紀が「自分がやらなくては!」という『責任感』に苛まれ、自分を追い詰めていた……と告げた次の日。
龍紀は無事、退院した。
それから数日、慣れないながらも周囲の協力も仰ぎながら生徒会と部活動を両立している様だ。
もちろん、周囲の人たちもそんな龍紀を微笑ましく見守りつつ、手伝いをかって出たりしている。
だから、以前の様に荷物が多いときに頼まれる事もたまにある……けど、それは俺が近くを通かかった時くらいだ。
「だーいぶ、龍紀も肩の力が抜けてきたよね」
「……まぁな」
それはとてもいい傾向だと思う。
「龍紀は……毎日毎日大変そうだったもんなぁ」
「……刹那と違ってな」
「ちょっ! 失礼な!」
「……図書室内では静かにしろ」
「うっ……すみません」
注意された刹那はすぐにちょっとふて腐された様な表情になった。
「怒られた……」
「いや、俺も悪かった」
完全に忘れていたが、ここは『図書室』だ。ただ『図書館』とは違うが、やはり多少は静かにした方がいい。
もとはといえば俺がふった話だから、非は俺にある。
「ところで何しに来たの?」
「あっ、あぁ。実は……」
俺は素直にここに来た『目的』を話した。
「ふーん、じゃあこの本かな」
「…………」
そう言って刹那は棚から一冊の『本』を取り出した。それは……星座の由来が詳しく書かれた分厚いモノだった。
「えっと『小馬座』は……」
「……」
正直、いつも小説を読むのに苦痛を感じているのに、よくこんな……分厚い本を読めるな……と思ったが……せっかく調べてもらっているのに茶々を入れるのは違うだろう。
「あっ、あった」
本では、ギリシア神話では、商業と伝令の神『ヘルメス』が、馬術の名手である英雄『カストル』に与えた馬とされており、天馬ペガススの弟馬で『セレリス』の名を持っている。
――つまり、あの『小馬座』は譲渡された『馬』が由来になっている様だ。
「なっ、なんか……龍紀っぽい?」
「刹那もそう思うか」
「いっ、いや……なんとなくだけど」
「気にするな、俺もそう思ったからな」
でも、そうは思っても今の龍紀は違う。
彼は『自分の弱さ』や『一人の限界』に気がついた。それにより、彼はもっと強くなれるはずだ。
――なんて、俺が言えた義理ではないし、そもそも俺の方が……。
「俺も……いい加減向き合わないとな」
「ん? 何か言った?」
「なんでもねぇよ」
「えー……」
気になりながらも、あまり追及してこない……それが俺はありがたい。
「……」
でも、そろそろ……本当に向き合わないといけない……と思う。長いない頃の俺、自身と――。
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