第6話


「……なぁ、お前。確か前に……宮ノみやのもり刹那せつな。正確には、俺の友人に会いたいって言ってなかったか?」

「言った」


「じゃあなんでお前は俺の家の前にいるんだ?」

「……」


 そう言って俺は少し年下に見える……実年齢不明の少女、星川空を見下ろした。


「なんか、出にくかった」

「……いや、普通に出てくればいいだろ」


「当事者には分からない緊張がある」

「……そうか」


 しかし、俺の記憶が正しければ……確かじんの時は普通会話していたはずだ。


 ちなみに俺の言っている『じん』とは『音無おとなしじん』のことである。

 今は音楽科のある都会の学校に編入し、世界中のコンテストでその名を轟かせている『天才』なのだが、実は数ヶ月前の神には今のような自信を自分に持てていなかった。


 空に言わせると「何かに焦っているような」状態だったらしい……が、実は俺が今集めている『カード』が精神的に支えられていたらしい。


 しかし、その『カード』が特別何かをした……という訳でもなく、ただ見守っていただけで、神には良くも悪くも何も影響はなかった。

 そして、その時の『山羊座のカード』を今は空が所持している……が、その時見た『山羊座』に関して俺は特に何も言っていない。


 まぁ、言ったところで何にもならないのは分かっている。


 それに、今は「なぜ近くにいたにも関わらず、出てこなかったのか……」に対してこれ以上何か言ったところで話に進展がないだろう。


「なぁ」

「……何?」


「ちょっと聞いて欲しい話があるんだが……」

「……?」


「その前に、家の前ではあれだしな。そこの公園でいいか?」


「? 前は部屋に入った」

「まぁ……、色々あって今は散らかっているからな」

 

 そう言って俺は適当に言葉を濁した。


「……分かった」


 空が俺のこの言葉に何を感じたのか……それは分からないが、特に深く追及することもなく、俺の後をついてきた。


◆ ◆ ◆


「……っていう小学生がいるんだが」

「それだけの断片情報じゃ分からない」


「そうか……だよな……」

「でも、カードはちゃんと集まっている。このカードたち以外のカードだとは思う」


 そう言って空は本を開いた。


「そうか……」


 その中にカードを収めることが出来き、現在のところ、なんとか十五枚集めることが出来ている。

 今ではなかなか集まらなかった「最初の頃の苦労はなんだったんだ?」って言いたくなるほどでここ最近はなかなか好調に集めることが出来ていると思う。


 それはもちろん、最初の頃は出来なかった「空がすぐにカードの場所を感じられるようになった」というのもあるが…………。


「……」


 やはり『協力者』がいるというのは心強い。それがたとえ『人間ではない幽霊』だったとしても……そう思いながら俺は暗闇にいる『ヤツら』を見た。


「………………」

「?」


「……あなたの友人も気になるけど、その少年の方がもっと気になる」

「気になる……って言ってもな」


 俺は戸惑った。この話に出てくる少年はさっき出会ったばかりで住んでいる場所はおろか、名前すら聞いてない。

 確か、俺が小学生の頃には名札を付けていた……と思うが、ここ最近の世間は何かと物騒だからなのか…………名札すら付けてない。


 そのような状況で名前を知るのはなかなか難しい話である。


 テレビやら色々なところで『今のご時世何が起こるか分からない』とか『プライバシーの侵害』など言われている世の中で自分の名前を外で見せる……ということはなくなっている。


「はぁ、お手上げか……」


 そう呟いた瞬間――――――。


『私、その子知っているよ!』

「ん? 声?」

「??」


 俺たちは突然声をかけられた方へと視線を向けた。

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