託されたフクロウ

けろよん

第1話

 僕の名前は賀来詠太(かく よむた)。どこにでもいる平凡な中学生だ。

 僕は今急いで通学路を走っていた。なぜかって?


「遅刻! 遅刻ーーー!」


 学校に遅刻しそうだからだよ。真面目だけが取り柄の学生として僕は遅刻するわけにはいかなかった。

 だが、このペースでは間に合わない。神様を恨んでしまうが、その神様は僕を見捨てなかったようだ。


「遅刻しそうな少年よ。真面目なお前にこのフクロウを授けよう。困った時に使うがいい」


 仙人のように優しい老人が僕にフクロウをくれたのだ。


「神様ありがとう! 使わせてもらいます!」


 切羽詰まった僕に手段を選んでいる余裕は無かった。ぬいぐるみのように愛らしくておとなしい少し不細工なフクロウを頭の上に掲げて願った。


「フクロウよ! 僕を学校に間に合わせてくれーーー!」


 すると何ということでしょう。フクロウが大きく翼を広げて急加速した。掴んだ僕を連れてフクロウは風のように校舎に突っ込んだ。

 下駄箱の前にふんわりと到着。


「間に合った!」


 僕は安心した。遅刻しそうだったのが嘘だったように余裕のある時間に着いてしまった。


「ホウホウ」


 フクロウはまだ僕に付いてくるようだ。学校に連れてきていいのか分からなかったが助けてくれた恩人を捨てていくわけにもいかず、僕は彼の好きに任せることにした。




 さて、僕はぼっちだ。いつもは教室に黙って入って黙って席について朝から眠くもないのに寝たふりをするところだが、


「ホウホウ」

「おはよう、賀来君」

「今日は友達と一緒なんだな」


 何とフクロウが代わりに挨拶してくれて友達にまでなってくれた。僕は照れくさくなってむずがゆい気分になってニコニコしてしまった。


 さて、授業が始まった。毎日退屈するところだが、今日はフクロウを触っているだけで良い気分になって時間が過ぎていった。

 だが、異変は思わぬところからやってくる。フクロウを触るのが気持ちよくて休み時間にトイレに行くのを忘れていたのだ。


「フクロウよ、僕の代わりにトイレに行ってきてくれー」


 尿意を我慢しながら言った僕の言葉にフクロウは答え、すぐに教室を飛んで出ていって、飛んで戻ってきた。

 だが、僕の緊張は収まらなかった。


「って、代わりに行ってきてもらっても駄目じゃん」


 その時、僕達の様子に目を留めた先生が言った。


「トイレに行きたいなら行っていいぞー」

「くっ」


『あははー』とクラスから笑い声が上がる。

 僕は笑い者になって教室を出て、用を済ませて帰ってきた。


「フクロウ、役に立たないなあ」


 僕はそう呟きながら席に着く。だが、すぐにその認識を改めることになる。


「これは!」


 何とフクロウが僕がトイレに行っていた間のノートを取っておいてくれたのだ。

 友達にもやってもらったことが無い行為に、(そもそも僕に友達はいないが)、僕は深く感謝した。


「お前、良い奴だなあ」


 僕は嬉しくなってフクロウの頭を撫でてやった。こうして僕とフクロウを隔てる垣根は無くなった。




 それからも僕達の生活は続く。

 フクロウのおかげで体育で活躍して、好き嫌いが無くなって、良い学校に入ることが出来た。

 お風呂にも一緒に入って友好を深め、ご飯の時も寝る時も一緒だった。

 フクロウとの生活は楽しかった。

 そして、卒業して偉い学者になった僕はフクロウの銅像を建てて宣言する。フクロウへの感謝を込めて。


「ここにフクロウ杯を開催する!」


 地球が盛り上がった。

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託されたフクロウ けろよん @keroyon

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