夏へ至る殉情

近野弓鹿

詩を綴る事は

移ろう心の肖像を描く行為でもある


脈の速さを憶えぬように

胸裡にすらも留め置かれず

吐息の色を忘れるように

生じた端から葬られるもの

それらを記録する為に編んだ言葉が

いつか、私の遺影となるのだ


ヒトのかたちが崩れた後も

心のかたちは在りし日の侭

取り留めもない情に殉じた

野晒しの春の私の亡骸を

名無し草でも摘むように

きみは見初めてくれるだろうか

書斎のほんの片隅で

本に挟んだ栞の如く

いずれ、所在をなくすとしても

言葉の他に実らすものもないならば

彩果てのつちと朽ちゆく歓びで

詩人の生を謳いたい

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