第14話 ヤンキーの姉ちゃんは唾を吐く! 吐くのだ!(1)
「貴様~! ちょっとこい~!」
「えっ? 儂?」
「あああ~。そうじゃ~。わらわに呼ばれたのだから。早くこい! 男! 今直ぐにだ~!」
「あっ、はい。わかりました……」
う~ん、何かしら? よくはわからないけれど?
おじさんがあの世! 黄泉平坂と世間さまで言われている場所で一人。慌てふためきながら声を大にして叫び──。
ワァ~! ワァ~! と、大騒ぎをしていると。何処からともなく女性の声音──。
それも? 大騒ぎをしていたおじさんとは違い。大変に若い声音……。
そう、思春期の少女のような声音で、おじさんに『静かにしろ! 貴様! ここを何処だと思っているのか?』と。少女は怒りをあらわにしている声色で、おじさんへと怒号──!
でッ、その後は、この通りだ。
死んだ筈? と、いうか? 死んでいるおじさんへと、今直ぐ自身のところ! 膝元へとこい! と、荒々しい声色で下知をくだしてきたの。
だからおじさんは、致し方ないと思いながら『ト、ホホ……』と落胆。『てくてく』と、足取り重く。憤怒している少女の許へと向かうのだ。
それも? 己の脳内で、こんな不満を漏らし思いながらだよ。
「(くそ~。あの小娘雌~。儂が一体、何をしたと言うのだ。あの姉ちゃんは? 儂のことをみように腹立てて怒りを募らせているようだが。儂はこれといって、あの姉ちゃんの不満や不快感を募らせるようなことをした覚え。記憶もない……。なのに? 大きな声で儂へと怒号……。くそ、腹立って致し方がない……)」
まあ、こんな感じだよ。おじさんはね。不満をあらわにした表情で、己を呼びつけた少女の方へと、『ブツブツ』と独り言を脳裏や口にも漏れているかも知れない? と、いった感じで俯き。いかにもおじさんを傍から凝視すれば、不満がありありの様子で俯きながら歩く。
彼女! と、いうか? 少女が誰なのか知らないと、いうよりも。おじさんは多分? 怖い物知らずなのだと思う?
彼自身がロクでもない人生を送ってきた【昭和】と呼ばれた。波乱万丈の時代の後半。戦争を知らない。貧乏人のお坊ちゃん育ちの世代の上に、【ヤンキー】上がりのおじさんだからね。本当に怖い物知らずの、何も動じないタイプのおじさんかも知れないよ?
だって彼! おじさんを荒々しく怒号! 怒声! 貴様に文句があるから。こちらにこい! じじい! と、呼びつけた人物。少女はね? 天動万象の人物であり神様でもあられる神々しく偉大な少女なのに。おじさんは彼女に対して、こんなにも不満アリアリの表情、様子でトボトボ俯きながら歩行──。
少女の前に着き、到着するものだから。
「貴様~! 何だぁ、あああ~! その不満のある顔と様子はぁあああ~!」と。
おじさんは、少々年配者なのに。自身の孫と変わらないぐらいの年齢、容姿を持つ少女に、また怒号! 怒声! を吐かれ、放たれる、だけではない。ないのだ!
「うりゃ、ぁあああ~!」
〈ドン!〉
「わりゃ、ぁあああ~!」
〈ドン! ドン!〉と。
刹那──!
刹那! 刹那! の連続攻撃! 雨嵐なのだよ。
そう、少女! 神々しい彼女のしなやか、美しい。スラリーと伸びた。カモシカの足で、おじさん最初はね? 少女の甲高い声音での怒声を聞き──。己の顔。頭をあげたと、同時に。少女のスラリと伸びた美しい素足……ではなく。
黒のスケスケストッキングを履いた足が、おじさんの後頭部へと直撃!
そう、おじさんは、神々しい少女から、態度が悪いと、己の後頭部へと延髄蹴りを食らい。貰うのだよ。と、少女──! 神々しいわりには、妖艶、官能的……。
少女の年齢的な容姿からしてみれば? 大変に不釣り合いな、麗しく、艶やかな容姿を持つ少女……。
まあ、少女は神様……と、いうか? 女神さまだから色っぽいのは、致し方がないことかも知れないね。
まあ、その場に倒れ、伏せた。おじさんの目の前にそびえ立つ、漆黒の長い髪と、漆黒の宝石のような人見知りを持つ女神さまは。倒れ伏せるおじさんに対して止めの如く、最後に腹部へと蹴りを二発入れこんだ後が、今の二人……。
おじさんと漆黒、麗しく美しい女神さまの様子と、言いたいところではあるのだが。
彼女と、いうか? 女神さまの様子と容姿なのだが。
おじさんの産まれ育った日の本で、未だに根強い異世界ファンタジーの転生物語に出演するヒロイン女神さま達のような。主人公、ヒーロー達を魅了するような美しい、いで立ちのきらびやかなヒーラー衣装を己の身に纏い。ボン・キュン・ボンの肢体を所狭しと魅せ、主人公達を虜。女神さま達の思いがままの難題を、主人公達へと投げかけ、追わせ。肢体。柔肌を主人公達へとちらつかせなから傀儡。舵をとっていくのが定番の筈なのに。
この少女?
まあ、女神さまなのだと思うのだが? 多分ね?
でもさ? 彼女の容姿の方がね? 女神さまらしくはない。と、いってもね。少女の容姿が魔王さまらしくもないのだよ。遠目から少女の容姿を凝視してもねぇ。
まあ、どちらかと言うと? と、言うよりも?
漆黒の美しい髪色と、漆黒の宝玉のような光輝く瞳を持つ美しく麗しい少女は? パァ~と見て確認して思うこと? そして、言葉に一言すれば? 少女の容姿は?
【ヤンキー】、【ヤンキー娘】、【ヤンキーの姉ちゃん】と、言った容姿──!
そう、短く縛ったセーラー服に、長めのスカートを引き続りながら仁王立ちをしている状態なのだ。
だから遠目から少女──。ヤンキーの姉ちゃんを凝視しても。本当に貴女は神様なの? と、問い。尋ねたくなる衝動に駆られそうになる。
まあ、なるぐらいだから。
ヤンキーの姉ちゃんに蹴り倒され、横たわるおじさんの方も。己の身体を起こしながら。
「(何でこんな暗闇の中に、ヤンキーの姉ちゃんがいるのだ?)」と。
自身の心の中で思う。
「いっ、痛、いた、たたた……」
と、悲痛な表情と声を漏らし、痛みに耐え兼ねながら起きる。
そんな悲痛、悲惨な様子のおじさんのことをヤンキーの姉ちゃんは、悪人! 悪者らしく。己の括れた腰に手を当て──。
彼女は上から見下ろすのだ。
「フフフ」と、苦笑も交えてね。
だからおじさんは、ヤンキーの姉ちゃん、ではなく。女神さまを凝視──! 見上げながら冷や汗を垂らし。また困ってしまってワンワンな状態へと陥るのだった。
◇◇◇◇◇
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