第22話『その手⋯⋯』

今日ゲームにログインしてもあいりはいなかった。

ちょうど東流院がログインしていたので今日もそっちを教えることにした。明日はログインしてくるよねと思いながら。










あれから1ヶ月。あいりからは学校でも話すことなく避けられ続け、ゲームの中でもログイン時間をズラしていて会うことがなかった。

俺はその間あいりとどうすればいいのか考えていたけど結局何も思いつかない。

その1ヶ月の間は東流院にゲームをずっと教えていたので結構強くなった。


今日も学校帰りにファミレスで教えて欲しいと言われたので一緒に歩いていた。

途中で東流院が転びそうになったので支えてあげた。

東流院も手を握って俺をそのまま引っ張るのでそのまま駆け足みたいな感じになってしまった。


「どうかな?もうれー君に追いつけるかな?」


「さすがにそれは無理だよ、レベルだけじゃなく装備もしっかり揃えないとだからね」


「わかった、がんばる」


流石にそんなすぐ俺の1年半のデータに追いつかれても困るからね。何故か早く俺と同じレベルに行こうとしてるけど。



◇◆◇◆◇◆



あれはなんだったんだろう。私の見間違いであって欲しい。

喧嘩をしてもうそろそろ1ヶ月経つ。その間ゲームの時間をずらして会わないようにしたり、学校でも無視したり避けたりしてた。

そして今日帰り道に私は見てしまった。

私の先を歩いている蓮君と東流院さんが手を繋いで歩いているのを見た。

それを見て察してしまった。そりゃ1ヶ月もすれば人間関係なんてあっという間に変わるよね。私は蓮君に捨てられたんだ。



私は後悔した。もっと自分に素直にならないといけなかったんだって。自分の立場を守るために行動して蓮君のことも考えずに当たり散らして。

友達はいつでも出来る。でも好きな人はその時にしか現れない。私にとって大切だった蓮君。また次にって出来るほど薄っぺらな感情じゃなかった。

その後どうやって帰ったのかは覚えてなかった。気づけばベットの中で泣いていた。

あぁ、もっと素直になってれば、気持ちを伝えてれば⋯⋯そうすればこんな喧嘩しなくて済んだんじゃないか。こんな結末にならなかったんじゃないか。

その日はそのままベットの中で泣いていた。



◇◆◇◆◇



逆に蓮はどうすればいいのか考えていた。

喧嘩して1ヶ月にもなろうとしている。未だに喧嘩理由はわからない。俺があいりをないがしろにしていたのが悪いとは思ってるけどそれだけなのか分からない。

その事を言ってもそのまま無視して来たのでそれがいいのか悪いのかもわからなかった。


その間も東流院にゲームを教えていたら結構仲も良くなった。先日一緒に帰った時東流院が転びそうになった時手を引いて助けたりもした。その場所は段差もなく何もなかったけど意外とドジっ子なのかな?とか思ったりもした。


やっぱりあいりのことを知るならあいりのことを1番知ってる人に聞くのがいいのだろう。あいりの両親に聞いた方がいいのかもしれない。でもそれはちょっと気が引けるのも確かだ。俺たちの問題で理由がわからないからって両親に聞いてもいいのだろうか?それくらいわからないとダメなんじゃないかとも思う。


結局俺は何も決められずそのまま家に帰ることにした。

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