うみのいきもの

 海をゆくのに一番いいのは

 舟でも船でも艦でもなくて

 やっぱりこの子の背に乗ることだわ


 大きな体にやさしい瞳

 ほのかな体温わたしを包む

 この子とならば怖くはないもの

 知らない海へと進むのも


 頬ずりをしてなでなでしながら

 いっしょに歌う青空の下

 この子と行くわ、どこまでも



   *



 一分間スピーチ、というものがある。朝の会で、お題についてスピーチをするあれ。わたしが担任するクラスでも、毎朝日直に話をしてもらっている。意外な一面を見られることもあり、けっこう楽しい。時間が余れば、聞き手が質問をすることもできる。

 おすすめの本、座右の銘、ドラえもんの道具でほしいもの。いろんなお題を出したけれど、印象に残っているのは「相棒にするならどんな生き物?」というお題だろうか。

「馬を相棒にしてどこまでも走りたいです」というリレーの選手の男の子、「ねこを相棒にしていっしょにお昼寝します」という絵の得意な女の子。いろんな生き物の名前が出たけれど、どれもその子の隣にその生き物がいるのが想像できて微笑ましかった。「ハムスターを相棒にします」と言った子は、相棒にして何をするんですか、と質問され、しばらく考えたのち「世話をします」と言った。それただのペット。

 自分だったら、何を相棒にしたいだろう。真剣に考えると、やっぱり行動範囲を広げられる生き物に落ち着きそうだ。これは人間の性なのだろうな。空を飛んだり海をわたったり、自分ではできないことを相棒と叶えたい。

 と言いつつ、子供たちに例としてスピーチしたときには「しろくまを相棒にして、涼しい気分になりたいです」なんて言ってしまった。何ができるかじゃなく、誰と過ごしたいかなのだと思う、結局。

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