宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

宝かごみかは、君しだい

茶葉と心をおどらせて


 宇宙に行ったらガラスの机で

 ミルクの紅茶が飲みたいな

 アッサムの茶葉で濃いめに淹れて

 白いカップに入れたやつ

 ひとりぼっちで寂しくなったら

 旅する王子に声かけて

 月を見ながらおんなじ色よと

 笑ってお茶をふるまおう

 紅茶とミルクが混ざったような

 淡い色した月の下



   *



 もし月に行けたら、どうしてもやりたいことがある。地球をながめて紅茶を入れて、星々に囲まれたお茶会を開くこと。憧れの宇宙と、憧れのお茶会。かけあわせて失敗するはずがないと思うのだ。

 すべての命を乗せ、雄大に頼もしくまわる地球を見ながら飲む紅茶は、どんな味がするだろう。振り返れば無数の星。感嘆の声をもらしながら食べるスコーンは格別にちがいない。うれしいことにいくら食べても軽い体で、ドレス型宇宙服をひらめかせながらおどってもいいかもしれない。

 不思議の国のアリスは、お茶会という言葉に特別な響きをもたせた。なんでもない日ばんざい、と狂ったように歌うティーパーティのシーンが好き。あんなに理不尽で非常識で、なんならアリスはひとくちだってお茶を飲めていないのに、あのおかしな空間に憧れてしまう。美しい狂気に満ちた世界。

 宇宙を彩る星々と月にも、大好きな物語たちがきらめきを与えてくれた。美しく強い月のプリンセスと、無垢で大切なことを教えてくれる星のプリンス。夜空を見上げるとき、いつも彼らを思う。

 月への切符はあと百年くらいは解禁されそうもないし、そもそもわたしは宇宙船の狭さが怖いので、とりあえず小さな夜空を見上げて紅茶を飲む。月にかつてあったシルバーミレニアムで、不時着した王子様といっしょに、いかれたお茶会を開く夢を見ながら。

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