夏合宿の終わり?
そんな訳で残りの二日も私は講習担当をやらされた。
火魔法、風魔法、土魔法、治療魔法……
景気よく魔法を使いまくったせいか四日目深夜にはまたもや牛鬼が飛来。
「訓練の成果を見るために今度は練習班だけで攻撃しましょう。盾と防護壁は前回と同じで」
そんな牛鬼に申し訳無いような対応でも勝ってしまった。
一回目より少し時間はかかったけれど。
そんな感じで予定通り四泊五日が経過。
三十一日の昼前、私達は無事いつもの実験準備室へと戻ってきた。
「さて、これで夏合宿は終わりです。練習班の方はこの後他班移動への希望アンケートを集めますので宜しくお願いします。
さて、これから八月二十八日まで夏季講習となります。その後二十九日からの九月一日までの休みを使って、かつてアトラ世界、フィルメディやサラステクス、バナジード等で問題になった大魔王麾下の四騎士、その第三騎士の討伐戦闘を行おうと思います。アトラ世界出身の方に限らず我こそはという方は是非三年生の方へ申し出て下さい。なおボス戦は自信無いが他の魔物相手に実力を試したい方も歓迎します」
何だって!
「流石に危険なんじゃありませんか?」
こそこそと壁と相談する。
「引率する面子さえ揃っていればもう問題無いだろ」
壁ももう『それ位大丈夫だろ』モードになっている。
いいのか相手は世界を破滅させる魔の第三騎士だぞ!
そう言いたいのだが確かにまあ、どうにかなるような気がしないでもない。
この前確認した限りでは、今のD班の編成でもそのまま倒せるような気がするし。
「あと沙羅さんと絵麻さんと杏奈さんと紅莉栖さん、それに遙さんと明美さんはこの後相談がありますので残っていて下さい。
それでは夏合宿、解散します。お疲れ様でした」
何だ。何か嫌な予感がする。
それでも逃げるわけにも行かない。
花梨先輩の魔法の前には逃げ切ることは不可能だから。
そんな訳で皆が帰った後、残った面子での話し合いが始まる。
「話し合いの内容は簡単です。第三騎士を倒した後の話になります。第四騎士、そして大魔王を倒す為にはある程度アトラ世界側の協力が必要でしょう。そのために今のうちから向こうに話をつけておきたいのです」
なるほど。
確かに異世界からいきなり行って倒してなんてのは不味い。
大魔王を倒す為にも、その後の措置の為にも話をつけておく事は必要だ。
「それでどの国と話をつけようかと考えた結果、フィルメディ王国が一番無難ではないかと私は考えたのです。これについて意見または質問はございますか」
「花梨先輩や沙羅先輩はサラステクス王国出身の本人ですし、その方が話が通りやすいんじゃない?」
壁がフィルメディ側としてはもっともな意見を言う。
でも私には花梨先輩があえてサラステクスにしなかった理由がわかる。
「サラステクスとフィルメディの国風の違いを考慮した結果です。サラステクスは魔法研究の本拠地を自認しており、魔法知識は国王の権限となっています。特に新しい魔法や魔法知識、強力な魔法使い関しては貪欲です。あの国に現状の私達が身を置いた場合、最悪拘束されたり知識を抜かれたりする可能性を否定できません。
一方でフィルメディは元々商業国家ですので、その辺はあくまで互いの利益を元に判断して頂けるでしょう」
そう、それで私もフィルメディに逃げてきたのだ。
グラードがフィルメディに落ち着いた理由も同様である。
「それにフィルメディはほぼ大陸の中央部分に存在します。今までの四騎士もほぼフィルメディ国内に出現しています。また中央部分に位置している関係上、他国家に出現した場合でも対策や対応を他の国よりはとりやすいでしょう。
また商業国家であるので、現在のところどの国とも国交があり、疎遠な国が無いところも重要です」
例えばサラステクス魔道帝国はバナジード神聖王国と仲が悪い。
何せ国王が代々魔術師で魔法使いを中心に国家が成立しているサラステクスと、最高権力者が大神官で唯一神を信仰しているバナジード。
構造的にもうお互い相容れないのは当然だ。
北のロクモア帝国は隙あれば南下しようとする軍事国家。
南西のアルメディア連邦は小国家の寄り合い世帯で常に不安定。
どの国ともある程度国交があるのはフィルメディくらいだ。
「そんな訳でフィルメディと話をしたいと思うのですが、どの方にどのように話を通すべきかを一緒に考えていきたいのです。私は第七王女でほとんど国政の場には出なかったものですから」
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