絶望の朝
苦しい。呼吸が何か上手く行かない。
身体が動かないばかりか左右から圧迫すらされている気がする。
『
半ば無意識で魔法を二回唱える。
何とか呼吸が出来るようになった。
私の意識は再び眠りの世界へと旅立つ。
気がつくとやっぱり寝苦しい。
何か温かい物に両側から圧迫されている。
何だろうと思ってぼーっと目をあける。
赤色の生地と何かが見えた。
赤色はよく見ると寝袋の表生地だ。
そして赤生地の間に見えるのは……顔!
ピントがまだあっていないが顔だ。
よく見るとこれは……百合亜さん!
そうすると背後のは……
『
咄嗟に魔法を唱える。
出たのはテント外、砂浜の上。
何とか固化する前に無事脱出出来た。
寝ぼけつつ障害除去魔法を唱えたおかげだろうか。
寝袋のチャックを開けて這い出て、寝袋の砂を払って畳む。
外は既に暑い。熱帯夜だったのだろう。
さて、私は左右のテントを確認する。
間違いなく目の前が私専用のテントだ。
それを確認してから中を魔法で調べる。
間違いなく三人、それもD班一年生女子三名の気配だ。
皆でトイレに行ってテントを間違えたのだろうか。
それにしては寝袋があったのがおかしい。
そう言えばマットもしっかり敷いてあったような気がする。
なら、何故……
取り敢えずテントの中を見ないようにしつつ寝袋を入口から入れる。
この中で寝るのは不可能だから起きるしかない。
睡眠こそ究極の至福なのに……
仕方無く砂浜に座ってぼーっとしている。
なお生活魔法班のテントのうち片方は既に起き出していて朝食を作っていた。
練習班の方もテントが開いているので起きている様子だ。
製作班とうちは熟睡状態のようだけれど。
三十分くらいぼーっとしていただろうか。
私のテントの中の気配が動き始めた。
テントの入口が開いて三人が外に出てくる。
「暑い暑い……あ、原因発見!」
極悪女に見つかった。
「酷いじゃない。テント内エアコンを切るなんて」
ちょっと待った!
「というかあれは私のテントだろ。何で皆いるんだ」
「済みません。昨夜は暑かったので、つい……」
その言葉で私は何が起きたかを悟った。
「つまり暑くて寝苦しいから、私のテントに移動したと」
「先輩達のテントも冷房効いていたけれどね、既に三人入っていて定員いっぱいなのよ。それで相談した結果、涼しくて空いている
「おかげで移動後は快適に眠れた。でもまさか逃げられるとは」
「涼むなら自分で魔法を使えばいいだろう!」
「私は冷える系魔法なんて持っていないのよ」
「同じく」
「一応少しは出来るのですけれど、無意識で持続させるのは無理です」
私は現在起き出しているテントとそれ以外のテントの差を悟った。
つまり生活班の食当担当は別として、起き出しているのはテント内の気温を魔法で調節できない班という訳だ。
うちの二年生テントはツインテがいるし、製造班は持続魔法とか得意そうだしな。
「つまりこの合宿を快適に過ごすためには、無意識で持続可能な冷却魔法を憶えなければならない訳か」
「もしくはその魔法を使える人を捕まえる能力だな」
勝田さんちの英美里さん! それちょっと酷くないか!
「わかった。食事前までちょっと練習をしよう。この三人でちょっとでもいいから寒冷とか氷雪系魔法を使えるのは?」
百合亜さんが手をあげる。
一人だけのようだ。
「でも私も覚えたい。いざという時役に立つ」
「そうね。あ、ちょっと待って」
極悪女がテント群の方を見て大声で言う。
「遙がエアコン魔法の講習をしてくれるって! 練習したい人集合!」
おい極悪女待った!
でも練習班テントとか、生活斑テントとかからごそごそっと女子が湧いてくる。
私は覚悟を決めて魔法を唱えた。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます