不都合な事実
「つまり女子修道院で幼い頃色々された悪戯がトラウマになったという訳か」
「酷いです」
「納得出来ました」
つまりグラードもとい佐和さんは全てを語ってしまった訳だ。
もう駄目だ。死にたい……
「まあ今世はいいことがあるよ、きっと。だから気を落とすな」
壁がそう言ってくれるが慰めにもならない。
「でも何故佐和さんはそんな事まで知っているんですか」
「前世では男同士の同僚たっだからね。酒飲みながらそんな話も聞くわな」
この恨みはらさでおくべきか……
話が終わってポニテとツインテが離れ、固化が解けた。
それをきっかけに私は反撃に移る。
「だいたいグラードだって結構酷い過去を持っているぞ。ドワーフの里からフィルメディ王国に逃げてきた理由。近隣のハーフエルフの里で幼女達相手に色々やったのがバレて、亜人世界にいられなくなったんだろ」
「相手の女の子達は一応十八歳前後だったぞ」
「ハーフエルフの十八歳は人類換算六歳前後だろ!」
そう、グラードはロリコンだったのだ。
「でも女の子の身体を傷つけたりは一切していないぞ。可愛がっていただけで」
「筋肉ムキムキの大男ドワーフが裸の女児と遊んでいるだけで有罪だ!」
「だって男より女の子、女性より女児の方が可愛いだろう!」
佐和さんは自信を持って現在形で言い切る。
まさか、まさかとは思うがひょっとして……
「まさかと思うがグラードのロリコン、まだ治っていないのか」
「今世の私は女の子だ。全く問題無い! ついでに言うと将来の夢は保母さんだ!」
おいちょっと待てやめろそれ犯罪だ!
壁が小さくため息をつき、口を開く。
「うーん、心情的には間違いなく有罪だけれど、今は女の子だしね」
おい壁、それでいいのか!
「遙みたいに前世を知っていれば別だけれど、傍目には子供好きのいいお姉さんとしか見えないんじゃない、きっと」
「残念ながらそうとしか見えないと思います」
ポニテ、ツインテもそんな事を言う。
「どうだ! 前世での行いのおかげで私は合法的にロリっ娘とイチャイチャ出来る身体に生まれ変わったのだ!」
「それはきっと犯罪を減らそうとする世界の意志だろ!」
「結果は結果だ、問題無い!」
佐和さんは小さい胸を張ってそう主張する。
「それにしても佐和さん、遙さん相手の時は口調が変わりますね」
百合亜さんが素朴な疑問という感じでそんな事を言った。
「そうだね。遙は割と前世の時のイメージと似ているんだよ。男としては小柄でいつまでも若作りでさ。常に女性と間合いを取っているところまで含めてもうそのものって感じ。だからついつい昔の感じで色々言いたくなるんだよ」
「お前は全くもって変わってしまったけれどな」
見た目はもう百八十度回った位に違う。
「さて、ご挨拶はこれくらいにしてそろそろ本題といこう。夏合宿用の武器を取り敢えず選んで注文票に記載してくれ」
そうだった。
何か色々気力が体力意志力全てがボロボロになったが目的は達成しないと。
そんな訳で私達は夏合宿向けの装備を確認しはじめる。
「佐和さん、この直槍もう少し細く短くして、槍先から五センチの所に三ミリ程度の返しをつけてくれない」
早速極悪女がそんな注文をする。
「ほい、ちょっと加工するから待って」
佐和さんは大量にある量産品らしい直槍を手に取って、右手で穂先を少しいじる。
更に魔力を通すと全体のシルエットがすっと細く短くなった。
「こんな感じかな。どう?」
極悪女は手に持って構えたり投げるモーションをしたりする。
「流石ね。ちょうどいい感じ」
「腕は前世のままだな」
思わず私も感心してしまう。
「そうでもないさ。前世の四割ってところだ。ただこの世界は素材がいいから前世みたいに自分で冶金したりしないで済む分早く出来る。そっちは大分魔力戻っているようじゃないか」
「やっと七割だな」
「上等上等。で、注文は?」
「今作ったのと同じ細い槍を頼む。あとそこの海産物仕様ってナイフはそのままで」
「了解了解」
腕はやっぱり前世譲りで信頼できそうだ。
性格の方は別として。
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