第十二話 不幸な再会
製作部門の魔女達
戦闘訓練用の空間からいつもの実験準備室に戻る。
準備室を出てポニテを先頭に階段を降り、一般教室棟と反対の方向へ。
「何処に行くんですか?」
「製作班はこの先の倉庫棟二階が拠点だ」
学校の最も端の建物だ。
「でも倉庫って物が入っていないの?」
「倉庫棟でも二階はは今のところ倉庫として使われていないんだ。だから羽鳥先生管理という事で、実際は文化研究会で使っている」
あらかじめ文化研究会の根城にするつもりで建設図面に干渉したんじゃないよな。
専科教室棟の端から渡り廊下に出て、独立した二階建ての建物へ。
ポニテは脇の階段を登って突き当たりの扉を開いた。
入ってみると中はかなり広い。
広さは教室三つ分はありそうだ。
その中に思い思いの場所に折りたたみ式長机を置いて女子生徒が作業している。
「やっほー、眞理っぺ、遊びに来たよ」
中程で作業をしていた中背のショートカットが顔を上げた。
「珍しいね、杏奈がここに来ることはまず無いじゃない」
「夏合宿前だからね。武器の発注に来たんだよ」
「なるほどね、確かにその時期だわ」
眞理っぺと呼ばれた人が立ち上がる。
顔をよく見て思いだした。
この人は二年の石岡先輩だ。
自己紹介以来話していないので思い出すのに時間がかかった。
「夏季合宿限定品は今は奥の金工でやっているよ。案内必要?」
「うんにゃ、わかるから大丈夫だよ。ところで戦闘班はどう?」
「楽しいよ。好き勝手にどっかんどっかん出来て」
「いいなあ。こっちは地味作業だからなあ基本」
「でも一番役に立つのはここだよね」
「どうだろ、生活班とどっこいじゃないかな」
文化研究会は大雑把に言って四つの班がある。
戦闘班、製作班、生活班、練習班だ。
製作班は魔法を使って武器その他色々の製作が活動内容。
生活班は生活に役立つ様々な魔法の開発と習得。
練習班は魔力そのものの向上や魔法習得の練習が主な活動だ。
私は慣れない女子は苦手なので戦闘班以外はほとんど知らないけれど。
「一緒にいるのは戦闘班?」
「そうだよ。今年は期待の新人が四人も入ったからね。夏合宿に備えてガイド中。じゃ金工の方行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
ポニテは勝手知ったるという感じで奥へと歩いて行く。
そして小さめの槍とか色々置かれているところで百合亜さんが反応した。
「あれ、佐和さん?」
「ははは、ここにいるのがばれたか」
小柄で三つ編みに眼鏡をかけた女子生徒がにやりと笑う。
「ついこの前ここに入ったんだ。何でも作っていいし材料無料提供って聞いて。百合亜がいるのは知っていたから何時あうかなと思っていたんだ」
「知り合い?」
壁の質問に百合亜さんは頷く。
「同じクラスです。よく話すんですけれど、ここにいるとは思いませんでした」
「今世は魔法は趣味で楽しむだけのつもりだったんだけれどね。材料と場所の無料提供に負けたんだ。それにこの世界、色々面白い金属があるしね」
なるほど、この人も前世組という訳か。
「まあそんな訳で、まずはお仕事お仕事。取り敢えず夏合宿向けの武器はそこに並べてあるよ。そのままでいい人は名簿に名前を書いて、カスタムが必要な人は応相談ってところかな」
なるほど。
確かに細くてやや長めの投げ槍とか魚を捌くのにちょうどよさそうなナイフとか、色々武器として以外に使えそうな物が並んでいる。
大型五爪槍と書かれた代物なんて、どう見ても貝掘り用の大型熊手だ。
更にクロスボウなんて代物まで展示してある。
「全体で十個以上注文があったものは、基本的には共用装備として持って行く。ただナイフサイズのものは個人用に作るよ。その辺はまあ色々言ってくれると助かるな」
「このどう見ても魚突き用の銛も投げ槍扱いなんだな」
「ゴムも付けたし色々便利だと思うよ。魚以外に獣等にも使えるしさ」
壁がうんうんという感じで頷いている。
「例年以上に反則な武器が多いな。これは楽しめそうだ」
「明美さんは即戦力だよ。武器に限れば製作速度も早いし出来も凄くいい。だから今年の夏合宿向けは全部任せてる」
石岡先輩が向こうからそんな解説を入れてくる。
「でも電子部品とか現代物はまだ全然だけどね」
「そんな物も作るのか」
「現代日本人だしね、LSIレベルはともかくICレベルは作れないと」
魔法も時代に合わせて進化するもののようだ。
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