仮入会届は細工無し
「君も転生者なのか」
思わずそう聞いてしまう。
何せ今まで私と同じような人間に出会った事が無かったのだ。
そう言えば魔法もこの世界で自分以外が使ったのを始めて見た。
この神無き世界で魔法を独自に使えるようになると思えない。
ならば……
「絵麻さんは転生者ですわ。私は少し違いますけれどそれは後の話に致しましょう。まずはここの活動についてお話ししたいと思います。
その前に貴方の名前を伺って宜しいでしょうか」
「松戸遙、一年A組」
どうしても女性を前にするとうまく話せない。
自然最小限の言葉遣いになってしまう。
「遙さんですか。それでは遙さんにお尋ねします。貴方は何故この高校を選ばれましたか? 校章ですか、エネルギーですか、説明文ですか」
いきなり校章と言われてドキリとする。
「校章」
女子の前なのでそう言うのがやっとだ。
「そうでしたか。あの校章は魔法図形の一つで、魔法の存在する世界では何処でも何かしら重要な図形として見られているものです。力のイメージだったり有力神の
他には学校オリジナルのパンフレット、ここの説明文には魔力が込められています。魔力を扱える、つまり魔法使いで無ければ気づかない程度のものですけれど。
更にこの学校自体の位置と建造物の配置から成るエネルギー配置に気づいて入校してくる人もいます。これは近くを実際に通ったり地元に住んでいたりしなければわからない事ですけれどね」
そう言われてみれば確かにこの学校の建物配置は魔術的だ。
フィルメディ時代の城とか都市とかと同じように。
前世はこのような建物配置に慣れていたから気づかなかったけれども、
でもそれを私以外にも感じるという事はだ。
「何の目的で」
相変わらず言葉が最小限しか出ない。
でも花梨先輩には通じたようだった。
「何故そうなっているのか、理由は私達もわかりません。今の校長や理事長も理由は知らないようですわ。これは直接知識魔法を使った者から聞いたので間違いないと思います」
「なら何故」
「それはわかりませんが、ただそれで色々問題は起こったりするのです。魔法を悪用しようとする者がいたり、魔物が現れたり等といったような事態が。特に魔物は最近頻繁に出現していますね。幸い絵麻のように戦闘が得意な方がいるので今のところ何とかなっていますけれど」
なんだと!
なら先程荒事という言葉が出てきたのも頷ける。
戦闘なんて荒事中の荒事そのものだ。
「そんな訳で魔法戦闘が可能な方には少しでも協力をお願いしようと思って、こうやって募集活動をしているわけです。具体的には
○ 魔法で近距離移動した場合、必ずこの部屋に出現するよう空間を操作する
○ 昇降口付近を遠くから見張って、何かしら魔法を使っている生徒を探知する
といったところですね。あとは魔法使い以外は読めないポスターをあちこちに掲示したりもしています」
なるほど、私はそのうち二つに引っかかった訳か。
「ただ実際こんな事をいきなり言われても信じられないと思います。それにここの活動が本当に正しいのか、集まって実は違う事をしているのでは無いかとの疑いを持つ方もいるでしょう。ですのでまずは活動時に見学にお誘いするために連絡先だけを教えていただいております。いざ魔物が出た時の注意も出来ますしね。
そんな訳でSNSなどすぐ連絡が取れる連絡先を教えて下さい」
今のところ言っている事はもっともだ。
それに魔物なんてきたら確かに連絡が欲しかったりもする。
何せ魔物は魔力を持っている人間を狙って襲ってきたりするから。
「まさか私の胸を触ったあげく壁呼ばわりしてそのままはないよな。罰としてそれくらいは書いていけ」
その台詞に少し固まりかけるが何とか復帰。『文化研究会仮入会届』と題した紙に名前とSNSのIDだけを記載する。
念の為仮入会届をよく読んでみたが、あくまで仮入会だけで本入会は別の用紙で正式に申請することとある。
魔法で調べてみたが文面偽装等も無い。
「それでは何かありましたらお知らせ致します。あと帰りはこちらの四角く枠がある部分からなら魔法移動出来るようにしてあります」
なるほど、流石空間魔術特化型の魔法使い。
使っている技術がただ者では無い。
そう思いながら私は指定された場所へ。
「
男子寮直近まで移動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます