2月23日──大風呂敷

うちの爺ちゃんは何でも風呂敷に包む。

着流しの懐に唐草模様の大きな風呂敷をいつも忍ばせて、荷物ができたら目の前でしゅるしゅると包んでしまうのだ。

この間あたしの息子が怪我したときも、しゅるしゅると包んで家まで運んでくれた。

まだ息子は小学一年生とはいえ、今年米寿を迎えた老人の腕力ではない。

「これに包むとな、どんだけ重いモンでも軽々と運べるんじゃ」

って嬉しそうに言うけど、本当かしら?


ある日のこと、うちの旦那が仕事から戻ってくると妙なことを言い出した。

「爺ちゃん、そろそろこの土地も飽きたし、見晴らしのいい丘の上に引っ越そうと思うんだ」

えっ、引っ越すの!?

「よっしゃ、任しとき」

爺ちゃんは表に出ると風呂敷をぱっと広げた。唐草模様の布はしゅるしゅると大きくなり、あたしたちの家を包み込んでしまった。


そして爺ちゃんはよっこらせと言うなり、巨大な家を担いでゆっくりと歩き出した──。


2月23日「ふろしきの日」

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