2月24日──猫ノ汽車 

夜汽車は駅のホームに停まった。

車輛へ乗り込むと、むっとする獣臭が漂う。乗客は一様に項垂れ、はあはあと息を切らしていた。


「停車時間は五分。充分に休め!」

機関室から出てきた車掌は猫の顔をしていた。

「あ、あのう、この汽車で田舎へ帰りたいのですが⋯⋯」

俺は恐る恐る猫の車掌に尋ねた。

「では、席へ着いて!」

鐔の大きな制帽から、ぎらぎらと光る眼が覗いた。

「は、はい⋯⋯」

席に座り、横で息を整える乗客に目をやると、鼠色の背広を着た大鼠が座っていた。

「あっ!?」

と叫ぶと、ガチャリと音がした。

俺の首には鉄の輪が嵌り、黒い鎖で繋がれていた。

そして、自分の体が鼠色の毛に覆われ、長い尻尾が生えている事に気がついた。


高らかに警笛が鳴った。

 ふぉおぉお、

  ふぉおぉぉおぉぉお、

「さあ、出発だ!」

全員で足元の廻し車をからからと漕ぎ始めると、汽車はゆっくりと駅のホームをあとにした──。



◉鉄道ストの日

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