第三話 幕切れ 必殺!断罪粛正剣!

 空に虹色で歪んだもやもやが突如出現した。

 そこから現れたのは断罪丸ボディ、20メートルはありそうなその巨体がそらから落ちてくる!

 重さで地面がえぐれて轟音が辺りに響き、空に有る虹色の歪んだもやもやは消えた。


「な、なんだ!? この神の力を感じる機械は!?」


 皇帝は、突如現れた断罪丸ボディが放つ異様な力を感じ取ったようだ。

 断罪丸ボディの胸元が開いて操縦席が見える。


「鏡、我が神器よ、一太刀で実力の違いを見せつけなさい」

「御意!」


 鏡は断罪丸コアを肩に乗せながら断罪丸ボディの操縦席へと素早く乗り込んだ!


「流石博士達だ、前回の戦闘の損傷が無くなっているな」


 断罪丸ボディの胸元が閉まり、操縦席に座る鏡は内部を見回す。

 内部は操縦席以外何も無いようだが、操縦席の右の肘掛けの先にくぼみが有る。


「行くぞ! 断罪丸!」

「ああ!」


 鏡は右手で断罪丸コアを軽く握り締めて、くぼみに断罪コアの足をはめた!

 カチッと音が鳴る、この状態は鏡と断罪丸コアがお互いに向き合っている状態だ。


「断罪丸、起動!」


 鏡は断罪丸コアを半回転させる!

 断罪丸ボディの起動音が鳴り、今ここに神と人の英知の結晶、断罪丸が起動したのだ!

 内部が明るくなり、操縦席を取り囲むように様々なスイッチが現る、さらに両方の肘掛けからレバーが現れ鏡はそれを握り締めた!。


「む!? なんだ!? 俺の身体を通じてボディが異常なほど出力を感じるぞ!? 博士達の調整ミスか!? 今モニターをで確認する!」


 断罪丸コアの周りにミニモニターとミニキーボードが台座から現れてる。


「いや、これは断罪剣がボディの出力を上げているんだろうな」

「なるほど、断罪剣も神の神器の一つだ、周りの気持ちが反応した結果ボディに異常が発生したのか?」


 画面に表示されている断罪丸ボディのステータスを見る断罪丸コア。


「異常……か」

「どうした?」

「俺は感じるぜ、自分で動けなくとも喋れなくてもボディから心を感じる」

「な、なんだと!? まさか九十九神になったのか!?」


 ビックリした断罪丸コアは慌ててミニキーボードを操作した。


「お前の言葉に付け加えるならボディは完全な機械だ、断罪剣のエネルギーが膨張した結果、ボディが動いているように見える事はあるだろうな」

「ふむ、興味深いがその話は後しよう、今は断罪の時間だ」


 鏡の言葉を聞いて落ち着いたのか断罪丸コアは冷静さを取り戻しミニキーボードを操作する。

 画面には『断罪剣封印解除確認端末』と出ていて断罪丸コアの右側に手の形の窪みがふる台座が出てきた。


「ああ……断罪丸! 断罪剣だ!」

「断罪剣封印解除!」


 断罪丸コアは勢い良く、右手を手の形の窪みの台座へと押し当てた!

 カチっと音がして、ミニモニターには『使用許可』と出ていた。

 断罪丸ボディの左側の腰が開きそこから剣の柄が現れる。

 鏡はレバーを操作する、断罪丸ボディは右手で断罪剣を取り出した!

 しかし、柄だけで剣の部分は無く、断罪丸ボディは断罪剣を天高く掲げている。


「皇帝、覚悟はいいか?お前も神の端くれならこの本格起動した断罪丸の力を感じているだろう?」

「こんな所で死ぬ訳には!」


 今更になって皇帝は逃げようとしている。

 神の力を過信せず絆の忠告を無視しなければまだ生き延びれたかもしれない。

 そもそもの話、自分の野心の為に絆という不幸の神をダシにしようとしたのが間違いだったのだ。


「断罪するのは今までお前が積み上げてきた恨み辛みだ、遠慮するなよ!? 断罪剣よ! この者を裁く力になれ!」


 断罪丸ボディが掲げている断罪剣がキラキラと光り、柄から天に向かって伸びるように黒い色の刃が現れた!


「鏡! ボディの出力が尋常ではないぞ!?」

「構わん! 全力でぶった斬る!」

「仕方ない出来る限りの制御はする、ボディが無闇に自壊するのはみてられん」


 ミニモニターを見ながら断罪丸コアは、キーボードを素早く操作する。


「縁の兄貴が言ってたぜ? 『神を殺せるのは人間の意思』ってな、そんな訳でよ」


 鏡は目をつぶり鼻で笑い、黒い笑みをする!


「俺が! 貴様を! どれだけ殺したかったか! 見せてやるぜぇぇぇぇぇ!」


 殺意に満ちた表情と怒号を発するする鏡!

 断罪丸ボディの掲げている断罪剣が、更に真っ黒になり更に天を目指すようにどんどん伸び続ける!


「この忌まわしき街と共に消えろ!」


 何キロメートル有るかわからない断罪剣を、両手でしっかり持つ断罪丸ボディ、鏡が操作しているはずなのだが、自らの意思で動いているようにも見える。


「断罪粛正剣!」


 鏡は気合いの入った声でレバーを操作する!

 その場で断罪丸ボディは、何キロメートル有るかわからない断罪剣を、両手で持って素早く一回転した!

 一瞬だけ雷のような光が辺り一帯を照らすと、次の瞬間には皇帝は真っ二つになっていた。


「ぎょにょわぁぁぁぁぁ!」


 どんなに逃げようが絶対に当たるその太刀筋は、振り終わると断罪剣はサラサラと消えていき柄だけになった、それと同時に皇帝が産まれた故郷も消えていった。

 不思議な事に周りの木々や岩、絆達に変化は無い。

 断罪丸ボディは一仕事終えたように、白い煙を吐き排熱をする。

 皇帝の姿は何処にも無かった。


「腐っても神か、残骸を感じるがボディにこれ以上は無理させられないな」

「まったく、オーバーヒートさせるつもりか?」

「すまんすまん、小言なら後で聞くよ」


 鏡は断罪丸コアを半回転させて台座から外して肩に乗せる。


「お前と言う奴は」


 断罪丸コアは呆れた声をだした。

 断罪丸ボディの胸元が開いた、そこから鏡達が降りてくる。


「おう、絆、縁の兄貴、スファーリアさん大丈夫か?」


 鏡が右手を上げながら近寄ってきた。


「なんか色々凄過ぎてコメントが出来なかった」


 スファーリアはため息をしながら断罪丸ボディを見る。


「お姉様、まだ後始末が残ってますわ」

「後始末?」


 スファーリアは首を傾げて絆を見る。


「皇帝、まだそこに居るのでしょう?」


 絆は何もない空中を見上げた。


『何故……我は……消え……ない』

「良かったですわね、まだこの世界にはあなたを信仰する人が居るようですわ」

「え? 居るの?」


 スファーリアは少しビックリしながら絆を見ていた。


「生き残ってる事が証拠ですわ」

「絆ちゃん、皇帝はどうなるの?」

「さあ? どんな神になりどんな事を成すのかはその神次第ですし」

「ずっとそのままって事?」

「そうですわねぇ、信仰心でも集めればいいんじゃないかしら? 出来るならね」

「今皇帝は幸せだろうさ、自分の成りたかった神になったんだからさ、運が良かったな」


 縁は祝福するように手を叩く。


「さ、無駄話はここまでにしましょうか」


 絆は傘を掲げた。


『まて……な……』

「ご自身の選択した未来、存分にお楽しみ下さいませ」


 絆は優雅にお辞儀をする。


「……滅ぼしかねたか」


 鏡は近くにあった岩をぶん殴った、その表情は怒りと共に自分の実力不足を感じているようだ。


「鏡、神を滅するのは容易くはありませんわ、悔やむ暇があるなら私の剣として精進なさい」


 絆は鏡に近寄りながらそういい、見定めるような視線で見ている。


「はい」


 鏡は姿勢を正して頭を軽く下げた。


「……もしかして尻にしかれてる?」

「いや、今は神様としての立ち振る舞いだよ」

「なるほど」


 縁とスファーリアはコソコソとそんな話をしている。


「それは一旦置いときまして」


 絆は鏡の両手を優しく自分の両手で包んだ。


「あなた、大丈夫ですか? また私の為に無理をなされたのでしょう?」


 凄く優しく口調でそう言った絆。


「お前を守れるなら、辛くても色々と精進しねーとさ、いざって時に力を出せねーだろ?」


 絆と鏡はお互いを愛おしそうな目で見ていた。


「……あれ? 絆ちゃん私達の事どうこう言えなくない?」

「いやほら、向こうは夫婦だし」

「なるほど、その免罪符があったか」


 まだコソコソと話をする縁とスファーリアだった。


「あー絆殿? すまぬがそちらの女性をちゃんと紹介してはくれぬか?」


 割って入るのが申し訳なさそうな声で断罪丸コアが絆に話しかける。


「あら、失礼しましたわ、私の『未来のお姉様』のスファーリアさんですわ、音楽の先生ですの」

「なんで未来のお姉様を強調して言ったんだ?」

「確定事項でしょう?」

「ま、そうなるといいな」

「む、鏡、ゆっくりと雑談と洒落込みたいが、奴らが来る」


 断罪丸コアのアンテナが黄色く光り出した!


「奴ら?」

「ああ、スファーリアさんは知らないか、俺達は正義の味方でも非合法組織だから、合法組織から追われてるのさ」


 鏡は素早く断罪丸ボディに搭乗した。


「なるほど、それは逃げないとね」

「じゃ! またな! 今度会った時にでもゆっくり話そうぜ!」


 断罪丸ボディから鏡の声が響くいた、空には虹色の歪んだもやもやが現れた。

 サムズアップした後、断罪丸ボディは虹色のもやもやへと向かう。


「さよなら」

「またな」

「ごきげんよう」


 それぞれが別れを告げると、虹色の歪んだもやもやは消えた。


「私達も長居は無用ですわね、帰りますわよ」


 絆は傘を開いて優雅に一回転する、黒い霧のようなものが3人にまとわり付き、闇に飲み込まれるように消え去った。

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