第一話 当たり前の事 その1

「よし、今日の予定はグリオードのイベントだな」


 長谷川は施設のプレイルームでメモ帳を開いて確認をしている。


「正確にはいずみと麗華さんとのイベントか」


 メモ帳を閉じてポケットにしまう長谷川。

 ゴーグルとシートベルトを装着すし、ゴーグル越しに見えるスタートを押す。


「行くぜ! レアスナタの世界へ!」


 何時ものポーズをする長谷川、この瞬間から縁となるのだ。


「さてと、ロビーに付いたけどもさっと」


 イベントだからだろうかロビーには何時もより人が沢山居る。


「お、メールだ」


 長谷川はメールを確認すると、いずみから連絡が来ていた。

 内容はグリオードの宮殿の執務室からスタートするから、ロールしてくるなり、いきなり来てもおっけーよ。

 と書いてあった。


「ならさっさと開始するか、わくわくが止まらないしな」


 縁はメニューを開いてフレンドの一覧を開く、そしてロールに参加するを選んだ。


「ほいほい、開始地点っと」


 開始ボタンを押すと縁は光に包まれ、そして消えた。



「おや、縁さんおはようございます」


 いずみは椅子に座りながらメガネをクイッとした。


「縁様、おはようございますわ」


 いずみの側で立っている麗華は優雅に頭を下げた。


「おはようございます」


 縁は軽く頭を下げる。


「陣英が隣国に潜入して色々と調べていますので、その間、茶番作戦会議でもしましょう」


 いずみはメガネを光らせていた。


「茶番て」


 縁はジト目でいずみを見た。


「茶番ですよ、隣国の戦力は私一人を殺せないんですよ?真面目に相手をするのが馬鹿らしくなります」


 麗華は首を振る。


「付け加えると、ジャスティスジャッジメントの戦力をプラスしても麗華さんの方が上ですね」


 いずみはテーブルに置いてあった本を開いた。


「なるほどな、作戦考える必要が無いのか」


 縁はため息をしながら近くの椅子に座る。


「いずみ、確認したいんだが隣の国はなんでここに戦争しかけたんだ?」


「前に言いましたが、配下の言葉を疑わないからです」


「ああ……思い出したわ」


 縁は呆れた顔をしながら右手をおでこに当てる。


「でっち上げた証拠をろくに調べもせずに信じているからですね」


「普通は調べるよな」


「そして自分のしたいように国を動かしているんですよ?」


 本に羽ペンで何かを書いているいずみ。


「自国ならいいんじゃないか?」


「この国みたく小国ならわかりますが大国ですよ? 大臣とかもいるようですが意味をなしてませんね」


「なんで?」


 縁は鞄から飲み物が入ったペットボトルを取り出した。


「隷属の神がこっそり仕込んだ力のせいですね」


 いずみは手を止めて縁を見た。


「力?」


 取り出したペットボトルの蓋を開けた縁。


「怒ると周りの人間が怯むようですよ?」


 小馬鹿にしたような言い方をするいずみ。


「いやまていずみ、疑問がある」


 飲み物を飲もうとした縁は飲まずにペットボトルをテーブルに置いた。


「なんでしょう?」


「隷属の神がかかわってるんだよな?」


「はい、隣国の王様は別世界から来た人間ですね」


 いずみは羽ペンでペン回しのような事をしている。


「隷属の神は信仰心を集める為に別世界で色々と布教をし、この世界に興味を持った人間を殺してこっちに呼び寄せるんだよな?」


「はい」


「隣国の王様の行動で隷属の神に信仰心は集まるのか?」


 何時になく真面目に話をしている縁。

 

「協力関係にあるジャスティスジャッジメントの手土産みたいなものですね」


「手土産? てか、協力関係にあったのか」


「協力関係については最近私も知りました」


「なるほど」


 縁は頷いた。


「話を戻して、隷属の神は信仰心を集める手助けの代わりにジャスティスジャッジメントに好き勝手出来る国を差し出したと」


 いずみはまた羽ペンで本に何か書いている。


「ほーなるほどな」


「縁様が来る前に色々と博識様から説明していただきました、あちらの真実は少し同情する価値はありますが」


 麗華は涼しい顔で話して居るが、室内なのに何処からか雪がちらっと降ってきた。


「常識的に考えても可笑しいですよね、何もしてないこの国に戦争を仕掛けてくるんですから」


 楽しげに話をしている麗華、部屋は次々雪が更に降ってくるが右手に集まってくる。


「てことは、王様の側近に幹部クラスのジャスティスジャッジメントが居るって事だな」


 縁は降ってくる雪を見ていた。


「ちなみに男の部下も一応居るらしいのですが、側近全てが女性です」


 いずみはため息をした。


「何時も思うんだが、男女問わず異性の一人でも居ないと大変だよな」


 縁は飲み物を口に含み、何かに気付いた顔をした。


「ん? ちょっとまった」


「お、新たな疑問ですか?」


 いずみが嬉しそうにメガネを光らせた。


「ジャスティスジャッジメントが関わってるんだよな?」


「はい、さっき説明しましたね」


「隣国、いやジャスティスジャッジメントがこの国を襲う理由はあるのか?」


「この国には様々な技術があるからですね、機械や魔法とかね」


 いずみが確認するように麗華を見ると麗華は頷いた。


「なるほどな、技術が欲しいのか、麗華さんは隣国とはもう戦ったのか?」


「はい、小手調べ程度ですが」


 麗華のその言葉に縁は疑いの目をする。


「そうそう、隣国の戦力で面白いからくりがあったんでした」


「ああ、あれは面白かったですが無意味でしたね」


 いずみはニコニコしながらメガネを光らせている。


「からくり?」


 縁は首を傾げた。


「まず、縁さんは人には認識出来ない色がある事は知ってますか?」


「確か黒だったかが本当の黒は認識出来ないんだったか?間違ってるかもしれんが」


「そうです、ジャスティスジャッジメントは面白い応用をしてまして」


 いずみは何処からともなく正解を表すマルが書かれた小道具を出した。


「応用?」


「『異世界から来た人間とその従者、敵対する者には見えない色』を作ったんですよ」


「何か凄そうだがそれに意味があるのか?」


 縁は凄そうなんだけど理解に苦しむ顔をしていた。


「まず国でその色を使えば異世界人にバレませんから好き勝手出来るんですよね、戦闘でも優位に立てますよ? 見えない所から見えない攻撃をしてくるんですから」


 早口で説明をするいずみ。


「ふむふむ」


「戦闘では面白いモノを見させてもらいました」


 麗華の頭には何時の間にか雪だるまが作られていた。


「面白いモノ?」


 縁は麗華を見る。


「相手が魔法を使うと、その見えない奴らが変わりとなる事をしてるんですよ」


「それに何の意味があるんだ?理解が出来ないんだが」


「私もわかりません、理解しようとも思いません」


「不意打ちしたいのか、小馬鹿にしたいのか、実力を誤らせたいのか、真意は興味ないので調べていません」


 いずみは首を回してストレッチをしている。


「おや、潜入していた陣英さんから、無関係な人達は回収出来る人数らしいですね」


 本を見てニヤリとするいずみ。


「じゃあ、麗華さんがどう動くかだな」


 縁はペットボトルに蓋をして鞄に締まった。


「徹底的に叩き落としますよ」


 悪魔の笑みをする麗華。


「どうしましょう?」


 いずみのメガネが怪しく光る。


「それにはまず博識様、王様の側近に居るジャスティスジャッジメントの人数は?」


「一人です」


「側近の人数は?」


「六人ですね」


「縁様、敵の頭と全ての側近が居る状況で私達が捕まる形で会うのは簡単でしょうか?」


 麗華は縁を見た。


「容易だ」


「博識様、陣英が無関係な救出してそれがバレるまでの時間はわかりますか?」


「聞いてみましょう」


 いずみは本に羽ペンで文字を書いている。


「『時間合わせは縁に任せた方が確実だ』と返答が着ましたね」


 本を読むいずみ。


「時間はどのくらいがいい?」


 縁は立ち上がりながら麗華を見た。


「一時間有れば」


 麗華は雪を降らすのを止めた、頭の雪だるまはスッと消えた。


「私は直ぐに終わりますが、博識様は質問したい事が沢山あるのでしょう?」


「お気遣いありがとうございます、有効に活用しましょう!」


 いずみは嬉しさのあまり立ち上がり、横に居る麗華の手をとった!


「攻撃の初手は私にお任せ下さい」


 ニコニコしている麗華。


「陣英には動いていいと言っておきました、そろそろいきましょうか!」


 いずみの言葉を聞いて縁は、ウサミミカチューシャを外して握り壊した、人の怨念に犯され、白い姿が血まみれのようになった本来の姿になる。


「幸せを届けに行こうか」


「お勉強を教えに出張ですね!」


「氷を作りに参りましょう」


 3人は実にいい笑顔をしていた。

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