第六話 兎と砂時計その12

「ご静聴ありがとうございました」


 色鳥は巨大モニターの前に集まってくれたプレーヤー達に向かって深々と頭を下げる。

 動画を見ていたプレーヤー達は拍手を始めた。


「陣英さんとロールした事あるけど、まさかそんな裏が」


「いや、お前の裏は闇組織の幹部だろ」


「絆ちゃん可愛いな~守ってあげたい」


「何言ってんの、少年時代の縁さんでしょ!」


「博識さんやべぇな、怒ると怖いタイプだ」


「みんな殺意高すぎだろ!」


「一番の狂気はシンフォルトさんじゃね?あれは怖いわ」


 動画を見ていたプレーヤーを各々知り合いと感想を述べている。


「縁君、そろそろ行かないと」


「時間か」


 縁はメニューを開いて時間を確認した。


「む? 帰るのか」


 椰重がスファーリアを見る。


「お疲れ様、またな2人共」


 色鳥は手を上げた。


「今日はお疲れ様でした」


 スファーリアは椰重と色鳥に対して頭を下げた。


「お疲れ様です」


 縁は頭を軽く下げる、そしてメニューを操作してログアウトを選択する。

 この瞬間から縁ではなく、長谷川に戻るのだ。

 身支度を済ませ受付で支払いをして、施設の玄関で待ち合わせる。


「長谷川君、お疲れ様」


「荒野原さん、お疲れ様」


 お互いに軽く頭を下げた。


「今日はタクシーで向かおうか」


「そうだね、歩いても間に合うけどそうしよう!」


 2人はタクシーで予約をしている居酒屋へと向かう。

 簡単な仕切りがある席に案内された2人は食べ物と飲み物を注目する。

 お通しと飲み物が直ぐに来たが、一通り揃うまで2人は今日のロールと色鳥の作った動画の感想を言い合った、しばらくすると料理と追加の飲み物が運ばれてくる。


「今日2度目の完敗!」


 荒野原はグラスを掲げた!


「荒野原さん、イントネーション多分違う」


 長谷川は苦手をしながらグラスを掲げ乾杯に付き合う。


「乾杯か!」


「本人にテンション高いよね、反省会の時」


「そりゃそうだよ、楽しい場所と時間は騒がないと」


 荒野原は楽しそうにニコニコしながらサラダを食べている。


「あ、そうだ荒野原さんに謝っまっとかないと」


「どったのさ?」


 首を傾げながら長谷川を見る荒野原。


「俺の友達が失礼したと」


「ああ、ロール中のお前ら付き合っちゃえ発言?」


「そうそう」


 長谷川は頷いた。


「その位で怒ってたらネットなんざ出来ないよ、それに椰重ちゃんにも色々言われたしね」


「なんて?」


 長谷川はピザを食べている。


「『ほう、お前に魅力を感じる男性が現れたのか?それは興味深い』って」


 キリッとした言い方で喋る荒野原、椰重の真似をしているのだろう。


「荒野原さんが魅力無い人みたく言われてるような」


「お、長谷川君は私に魅力を感じるか?」


 荒野原は長谷川を指差した。


「ああ」


 長谷川は頷く。


「ヒュー! クールな長谷川君やな」


 楽しそうに長谷川をジェスチャーでおちょくる荒野原。


「本当に楽しそうだね、荒野原さん」


「当たり前だろ馬鹿野郎、私は喜怒哀楽がちょっと激しいんだよ」


 荒野原はテーブルを軽く叩く。


「ちょっと?」


 長谷川は苦笑いしながら荒野原の行動を見ている。


「んだ、それに楽しいと思う人と一緒に居るんだから楽しいのは当たり前だろ」


 荒野原はどや顔をしながらお酒を飲んだ。


「これは恋愛ゲームならフラグだな」


 長谷川はポンと手を叩く。


「はん!私は目に見える好感度なんてのは持ち合わせないわ」


 荒野原は指を揺らしながらチッチッチと言っている。


「そりゃそうだ、目に見えたらつまらん」


「お?」


「音色も目に見えないからな」


 長谷川は笑顔でそう言ったと共に、光の屈折なのか歯が光った。


「なるほどうまい! 解説不要! そして歯がまぶしいなおい!」

 

 荒野原はペシペシと軽く机を叩いている。


「ふと思えば長谷川君は素の私を見てもあんまり驚かなかったな」


「親が昔から耳にタコができるほど言ってた言葉があってね」


 長谷川はピザを少しほおばる。


「なんて?」


「『人なんて会話しないとわからないんだから話せ』ってね」


「ほほー」


「後は直感で苦手と感じたらソイツとは絡むなとか色々ね」


「あー私の親もだいたい同じ事言ってたわ」


 荒野原はため息をしながらお酒を飲む。


「どんな?」


「『自分と相手の醜く見せたくない部分をさらけ出せる男つれてきな』って」


「それ異性に対してだな」


 長谷川は苦笑いをした。


「で、あたしゃ少なからず長谷川君に可能性を感じたのよ」


 荒野原は長谷川を指差した!


「お、それは嬉しいな」


 長谷川はクールに笑いながらサラミを食べる。


「ただね……」


 荒野原はニヤリと笑う。


「異性として好きな訳じゃないから勘違いするなよ?」


 威嚇するように長谷川を見る荒野原。


「安心してくれ俺もいい大人だ、可能性があるってだけで浮かれる歳じゃなくなった」


 長谷川は首を振った。


「長谷川君何歳だっけ?」


「24」


「ぶは! 長谷川君若い!」


 荒野原は飲み物を吹きそうになり、慌てて口を押さえた。


「いや、荒野原さんも若いでしょ?」


「あたしゃ27だよ!」


「いや若いじゃん」


「ネットじゃおばさんって言われる歳だよ!」


 机をペシペシと軽く叩く荒野原。


「って、歳の話は置いといて、可能性があるって話をしたら変な勘違いしやがるんだよ」


 荒野原は舌打ちしながらそう言った。


「確定情報じゃないのによく勘違い出来るな」


 長谷川は頷きながら答える。


「そう! で、私が悪くなるのよ、ふざけんじゃねっての、ぶっ殺すぞってんだ」


 荒野原はフォークを荒々しく肉にぶっさした!


「うーん、まあわからなくもないが……簡単に女性を口説けると思ってそうだな」


「お、長谷川君はわかってくれるか!」


 フォークでぶっさした肉に食らいつく荒野原。


「ああ、一般的な恋愛ゲームですらデートして好感度稼いでるからな、設定とかで変わる場合もあるけどもな」


「モテたかったらチョロインでも引っかけてろってんだよ、ケッ!」


 荒野原はフォークをテーブルにそっと投げた。


「まあまあ荒野原さん、楽しい席なら楽しい話をしようぜ?」


「確かに、いや~ごめんねモテないおばさんのグチを聞かせてしまって」


 荒野原は苦笑いをしながらわざとらしく照れている。


「んじゃ、今度何処か出掛けよう」


「ファ!? 唐突っすよ!?」


 荒野原は両手を上げてビックリしていた。


「そうか? 俺は可能性があるんだろ?」


「それにしても唐突っすよ?」


 長谷川をジト目で見る荒野原。


「荒野原さんにも可能性の提示さ」


「む!? 待って!」


 荒野原は右手を前に突き出した!


「ど、どうした?」


「この流れでデートに誘われると、面倒くさい事になるよ」


 長谷川は荒野原の言葉にハッとした。


「確かに、お互いが可能性を提示させたとなれば、どっちが告白するだのその他色々と面倒くさくなるな、創作物が証明している展開だ」


「そうそう、だから普通に誘ってちょ」


 荒野原はへの字口で答えた。


「今度一緒に出掛けようよ」


 長谷川は普通にそう言った。


「よし、承りましたわ」


 荒野原はにこやかに頷く。


「ああでも、俺はデートの経験なんてゲームくらいしかないからがっかりさせるかも」


「ジャージでも構わないよ?」


「俺の私服がジャージとバレてるだと!?」


「いや、今もジャージだしバイト中もジャージだよね?」


 荒野原はジト目で長谷川の服装を見ている。


「申し訳ない」


 2人は喋る事に集中しているようで、料理に手をつけていない。


「別に謝らなくていいよ、人として恥ずかしくない人となら私は一緒に居れるよ」


「随分と広いな」


「っても、私も男性とはあまり遊んだ事は無いんだけどさ、中学とか高校とかの複数人で遊んだ時とか」


「俺もそんなもんだよ」


「あ、そういえば妹から言われたな」


 長谷川はポンと手を叩いた。


「ん?絆ちゃんから?」


 荒野原は首を傾げる。


「『兄貴、スファーリアさんとリアルで遊んでるの?』と言われたからさ」


「ふんふん」


 荒野原は頷いた。


「何回か反省会って事で飲みに行ってるよって言ったらさ」


「うんうん」


 更に頷く荒野原。


「『兄貴と波長が合う女性は貴重だから付き合う云々以前に逃しちゃダメだぞ』ってさ」


 長谷川は苦笑いしながらお酒を一口飲んだ。


「長谷川君酷い言われようだね」


 つられて荒野原もお酒を一口飲む。


「まあ、レアスナタ一筋で生きてきたようなもんだし」


「私も似たようなもんだよ」


「なるほど、だから波長が合うのか」


「じゃあ、この出会いに乾杯だね」


 荒野原はグラスを前に出した、長谷川は乾杯に答える。


「そして何処に出掛けるか」


「後で決めよう、それより来週から遂に公式初イベントだ」


「ああ、そうだね」



 2人の反省会はまだまだ続くのだった。




運と愛し合おう!第一章完。


第二章、ジャスティスジャッジメントの正義に続く。

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