秋 オリオンのかげに
1
「星ねこ号」は少しずつ郊外に入りつつあった。
どこまでも続くかと思われたビルや集合住宅、高架道路といった街並みが少しずつ減ってゆき、住宅地や森の影が目立ちはじめる。
夕暮れ。
残暑をはらむ空気も、夜が始まると同時に少しずつ落ち着いてくる。そして、線路わきの草むらから虫の音が響きはじめた。
「星ねこ号」は人口の多い地方小都市を発車し、郊外を通って山間部へと向かっていた。
都市部の
しかし駅が進むごとに、少しずつ乗客は減って行き、夜になるとちらほら空席が目立つようになる。
深夜に「星ねこ号」はそのまま夜行便に切り替わる予定であった。
列車が停車すると同時に、トキ子の周りが急に
そこは小さな町であった。おそらく基幹駅から最も離れたベッドタウンなのだろう。トキ子のような長距離旅行客でもなければ、ここが実質的に終着駅のようなものだ。
列車は出発し、トキ子は
線路は山中に入ってゆく。車窓にはもう建物や民家、街灯すらほとんど見あたらない。
いつしか時計は二十四時を回ろうとしていた。
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