神様、辞めさせて頂きます。
茶摘 裕綽
プロローグ
「開け」
国王が腕を伸ばしそう唱えると、手のひらの先から虚空が音もなく、紙のように破けた。
空間がめくれあがり現れたのは異世界へのゲート。
人がくぐれる最小限、最小幅。その先には闇しか見あたらない。
これをくぐれば、いよいよこの世界ともおさらばだ。未練は何もない。この先には人間としての自由で楽しい生活が待っている。
だが、その前にやるべきことが一つ残っていた。
「怖じ気付いたのか?」
俺は怪訝そうに訊いてくる国王に向き直りしっかりその目を見すえ、覚悟を示す。そして懐から取り出したそれを差しだし、
「辞表届け?」
「はい、一身上の都合により――」
今までの感謝を込めて高らかに宣言した。
「――神様、辞めさせて頂きますっ!!」
それから程なくして、俺は暗闇の中へと飛び込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます