マイ フーリッシュハート
なんでジャズライブ屋なんか始めたんやろー
俺はジャズ屋の親父
今日も店を開けている
19時過ぎに店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
?
姿が見えない。誰も入って来ない。
なんや 冷やかしかいなと扉を閉めに行くと
えっー
驚いた!
お爺さんが一人彫刻の様に固まっている。
「マイフーリッシュハートだけ聞きたいんや!店に入るの手伝ってくれ!脚が悪いんや」
わかりましたと手伝って店の椅子に座らせるまで10分、わずが2mの距離だ。大丈夫かな
と心配したが お客さんなので聞いて帰って頂こうと思った。ここまでよーこれたなあ?とその方が気になってしまった。
「何しましょうか?」
「そやな、ビールにするわ」
脚以外は大丈夫みたいで、瞳も柔和で口調も優しい。
オーダーを聞いて その足でボーカルの所に行き今日はマイフーリッシュハートを歌ってと頼んだ。
今日もお客さんはこのお爺さんとボーカルの女の子の追っかけみたいなおっさんだけ、
せっかく脚が悪いのに来てくれたお爺さんのリクエストは応えてほしいもんだとええマイフーリッシュを歌ってよと肩を叩いてカウンターに戻った。
ファーストステージにはマイフーリッシュハートは歌わずセカンドステージで歌ってくれた。お客さんはすくないが 熱心に聞いてくれるのでボーカルの女の子も熱が入っていた。
いいマイフーリッシュハートだった。
何百回も聞いた俺も聞き入ってしまうほど良かった。
お爺さんの方を見ると天井の方を見てぼーっとしている。しみたんやろなあと少し安堵しているとお爺さんが
「おい ちょっと手伝ってくれー」
唐突に言ってきた。
はい なんでしょう?
「ちょっと おしっこがしたいんや! トイレかしてくれるか?
それと悪いけど手伝ってくれ」
と
何を手伝うのだろうといろいろ考えながら おじいさんに肩を貸しながらトイレまで行った。
「おお ここでいいわ ちょっと広いとこがええわ」と
いうので そこで止まって 少し離れようとしたら
「おい どこいくんや!手伝ってくれ!」
手伝うって何をすればいいんですか?
「何をいうとるんや!持ってくれたらいいんや!」
持つ?何を?頭が高速回転しだした。
持つってあれをかいな?かなわんで なんで俺がおじいさんのイチモツをもって小便ささなあかんねん 最悪や!と胸の中で叫んでいるとおじいさんが
「はよ 持ってくれ!出てまうやろ!」
怒りながらいうので 仕方なく おじいさんの前に周りチャックをおろそうとしたら
「お前 何をするねん!変態か?」
えええ
でも持てって言ったのはおじいさんでしょうというと
「アホか!イチモツをもてと言ってるんじゃないわ」
後ろから俺のベルトをもって支えてくれということじゃ!」
「アホか」
言葉には腹がたったが 少しほっとした。
おじいさんのイチモツなんてもちたくないわ あー助かったとほっとしてたら
おじいさんがまたも大声で
「なんでもええから はよもってくれ!出てまうし 倒れるやろ!」
急いでおじいさんの横に立ちベルトをしっかりもって準備した。
すると
おじいさんは首をかしげて
「あれ?出えへんぞ?」
「おい 兄ちゃん おしっこがでえへんわ ちょっと悪いけど いうてくれへんか?」
?
何をいうのですか?
「アホやなお前 おしっこが出えへんかったら 横にいてシーコッコっていうのや
頼むわ 言うてくれ!」
なんで?俺が?しーコッコ?何やねん?
横について3回目のシーコッコでおじいさんの小便は この世に出た
出るときのおじいさんは あ〜幸せ!みたいな顔してた。
僕はジャズ屋のマスターやでなんでこんな事せなあかんねん!
難儀なお客さんである。
でも
昔そういえば 幼稚園の時 お母さんが よくシーコッコって言ってくれてたなーと
思い出し 懐かしいい気持ちになったのだが
このお爺は憎めないけど許されへん
はよ帰ってくれ!
ライブの余韻も冷めてしまって弛れた雰囲気なってしまった。
ほんまかなわん爺さんやで
とコップを洗っていたら又 トイレから大きな声で「兄ちゃん!帰るからドアまで送ってくれー」と
やれやれほんまにたまらんなあとトイレに行きお爺さんの肩を抱き扉を開け表まで一緒に出た。すると爺さんが「ありがとうな」と少し潤んだ目で俺を見ながら言った。
俺はもうその言葉で全て許せて ここに来てくれてありがとうと言う気持ちになり爺さんに「又 来てください!」と言った。
爺さんは何やらはにかんで
「又 小便も頼む!」と笑いながら言うので俺は「任しといて下さい」と調子に乗って行ってしまった。連れて行くのはいいがしーこっこというのは嫌なんで 複雑な気持ちだが
ジャズを愛してくれる人 いつでも来て欲しいと後ろ姿に声を掛けた。
今日は今日で難儀したけどおもろかったわと一人頷いていた。
ボーカルの女の子も満足してた感じだ。
ほんま難儀します!
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