25話 ゴブリンロード再び
ラグナロクは1週間経っても終わる気配を見せなかった、かなりのペースで狩り倒していた事もあり、俺たちは全員25レベルとなったのだが、カオリが【魔法制御】を習得しただけで俺とサラに追加スキルは無かった。
「んん、5レベル毎ってわけでもないのか?」
「どうだろろうな、カオリはちゃんとスキルを習得してるみたいだし……ま、不意にスキルを習得したりもあったからバランス調整だろ!」
「ま、考えても仕方ないしな」
俺たちは緊急討伐依頼でゴブリンロードの討伐へと向かっていた。
楽をしようと思ったわけではない、単純に受けられると思った範囲で報酬が一番高かったのがこの依頼なのだ。
「しかし30レベルのゴブリンロードって下手したらBクラスの相手じゃないですかね」
「どうなんだろうな、Cクラスってのはかなり幅が広いようにも見えたぞ」
世の中の冒険者の殆どはCクラスとBクラスだと言われている、Cクラスの依頼の中でも特に難しいとされる依頼は正直俺たちでも受ける気にならない、そんな依頼もあればDかEクラスでもいいような依頼というのもCクラスの依頼の中には存在する。
「ギルドのあの偉そうなオッサンでもレベル50、倒し慣れた相手とは言っても色々と凄いんだろうな、威力とか」
「どうなんだろうな、モーション据え置きなら楽チンだぜ?」
「何にせよ油断は大敵ですよ、ラグナロクで魔物もかなり増えていますしね」
どうやらゴブリンロードは森の中で目撃されたようで俺たちはゴブリンを倒しつつゴブリンロードを探していた。
「はぁっ!」
「どうだ? 大太刀の使い心地は」
「結構しっくりくるな、剣技も刀専用のものがあるみたいだし」
刀と剣は剣術として統括されているようだが剣技はやや違ったものとなっている。
剣は言ってしまえば力任せな技が多かったが、刀は流れるような技であった……と言うと少しだけ誤解が生じる。
刀とは言ってもやはり大太刀は叩き斬るものとして扱われているのか力任せな技というのは少なくは無かった。
ゴブリンを大太刀で切り捨てつつ奥へと進んでいくとゴブリンロードの姿があった。
しかしそれは確かにゴブリンロードなのだが体長は3mほどあり、明らかに雰囲気が違った。
「おいおい、マジか?」
「何食ったらあんなデカくなるんだろうな」
「受けたからにはやりましょう、油断は禁物です!」
ガアアアァァァッ!!
ゴブリンロードが咆哮する、手には大剣が握りしめられておりゴブリンロードがそれを振るうと魔力による衝撃波が繰り出された。
「なっ!?」
「おいおいマジかよ!」
「下がってください! はぁあっ!!」
カオリが前に立ち防御呪文を展開する、スキルとロングソードによって強化されたそれだがどうにか防ぎきるもヒビが入っておりその威力の大きさを知らされる事となった。
「ゴブリンロードつっても別の魔物として見るべきだな!」
「そうらしい、援護は任せろ!」
「頼みますね! サラさん!」
俺とカオリが前へと出る、カオリは杖をしまいロングソード1本で挑むようだ。
「プロテクション! パワーレイジ! ドレインブレード!」
パワーレイジはインテンシファイの上位互換の魔法だ、効果時間はインテンシファイが10分に対して3分と短いものだがその分効果が高い、短期決戦や一気に削る際に使う魔法だ。
大太刀は正直なところ剣と殆ど動きに差が出ていないように感じる、幸いにもそのおかげで回避のタイミングや剣技の発動はこれまでと同じような感覚で行う事が出来た。
「くらいなさい!」
カオリが何度かゴブリンロードを切り裂いた後に複数のファイアボールを出現させ一気に放った。
詠唱短縮によって行使する際に同時に魔法を顕現させる事が可能となっていたようだ。
驚かされる事はあったが状況はこちらが有利に進んでいた、増援のゴブリンは上手くサラが処理してくれているおかげで俺たちの戦闘の邪魔は一切入っていない。
時折サラもこちらへ魔法や銃撃による支援、俺のクリティカル、そしてカオリの重い斬撃と魔法によってゴブリンロードは消耗していった
ガアァァッ!!
しかしゴブリンロードは吠えると同時に武器を地面へと叩きつけた。
それと同時にゴブリンロードを優しい光が包み込む。
「冗談キツいぜ、回復するってのか」
「そうみたいですね、しかし完全には回復出来ていないはずです! 倒れるまで削るまでです!」
「相手のMPだって無限じゃあないだろうしな、いくぞ!」
回復してからのゴブリンロードは強敵だ、大剣を振るいつつ更には初級魔法を放ってきたのだ。
初級とは言えどもバカにはできない、知力のステータスはそれなりに高いのかくらえば相応のダメージをもらってしまう、魔法のタチの悪さはその見切りにくさにある。
「クソッ……!」
「厄介ですね……!」
ファイアボールやフリーズと言った撃ち出す系の魔法はまだ対処がしやすい、しかし初級であれば電撃系、中級は範囲攻撃といった即着のものは回避のしようがない。
俺は見切れさえすれば絶対回避でどうにかなるがサラやカオリはそうもいかない、確実に削られてしまうのだ。
「はああぁっ!!」
カオリのとった行動は捨て身だ、どうせ攻撃を回避しようがないのであれば相手が魔法を使うタイミングで全力の攻撃を行うというものだ。
捨て身とは言ってもプロテクション、そしてアンチマジックを発動させて可能な限りの防御魔法はかけてのものだ。
アンチマジックは魔法に対する耐性を獲得する中級防御補助魔法だ、効果時間は10分と長いものではあるが現状魔法を使う敵というのはこのゴブリンリードが初めてだ、ギーヴルのレーザーは魔法判定ではないらしくこの魔法で対抗する事は出来なかった。
ちなみに物理に対する防御補助魔法も存在する、ハードシェルという魔法でプロテクションと組み合わせればかなりのダメージ軽減が可能となる。
しかし今の所それを使用したケースはあまりない、正直なところプロテクションでどうにかなるのだ。
「フレイムウェポン! プロテクション! パワーレイジ!」
戦闘は長引いてはいるがこちらの有利は変わらない、切れたバフをかけなおしつつ太刀を構える。
サラは上手く立ち回っているようでゴブリンロードの魔法の標的には殆どされていないようだ。
ゴブリンロードが思い切り武器を振り上げる、グラウンドスマッシャーだ。
「カオリ! グラウンドスマッシャーだ!」
「倍返しにしてやりましょう!」
2人で正面へと構える、グラウンドスマッシャーは威力が大きいものの見切りやすい、故にタイミングさえわかっていれば対処は用意だ。
「「はあぁっ!!」」
ガアアアアァッ!!!
俺とカオリが同時にカウンターを発動させてゴブリンロードを叩き切る、パーティーを組んでいるおかげでカオリごと叩き切っても問題が無いというのが救いだ。
カオリも同じことを考えていたのかカオリのロングソードが俺の体をすり抜けていった。
クリティカルは発生しなかったが威力はかなりのものだ、ゴブリンロードはこのふたつの斬撃によって力尽きた。
「よし……っと」
「どうにかなりましたね!」
「あぁ、でもゴブリンはまだ退散してはくれないようだ」
「一掃する?」
「俺がするよ」
サラが指を鳴らすと一帯が炎に包まれた、カオリの時もそうだったが森は焼けていない、ゴブリンが一気に焼き払われ経験値となって消えていった。
「カッコつけやがって……てか詠唱短縮を習得したのか?」
「あぁ、今回は魔法を多めに使ったからな、そのおかげかもしれん」
サラは親指を立ててニカッと笑う、しかしゴブリンはすぐにまた森の奥から現れ俺たちへと襲い掛かって来た。
「行ってみないか?」
「どこにだ?」
「湧き場所だ」
ゴブリンは周囲から押し寄せてきているように見えたが大部分は正面奥から走ってきているようだった。
「原因がわかるかもしれませんしね、行ってみましょう!」
俺たちはちょっとしたサービス残業をする事にした。
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