第8話 宝箱

「はぁ……疲れ……てないな」


「強敵だったね……でもアレを倒しちゃうなんてすごいよ!」


 ゴブリンロードを倒した事でレベルが上がったようだ、確認してみると一気に2レベル上昇したようで6レベルとなっていた。


 そしてレベルアップしたおかげなのか新たなスキルを習得出来たようだ。


 【レベル看破】説明不要なスキルだな、相手のレベルがわかると言うスキルだ。


「コレで少しは楽になりそうだな」


「ふふん、私の加護だからね!」


「ありがとうございます女神様」


 ステータスは相変わらず近接戦闘に向くものが一番伸びていたが、今回は知力の伸びもこれまでに比べると良かった、使えば使う程その分野が伸びやすいという法則でもあるのかもしれない。


「とりあえず……お」


 ゴブリンロードはゴブリンロードの耳、何かの鍵、そして良品質のプレートアーマーをドロップしていた、俺の今の防具は所々金属で強化されたレザーアーマーなのだが、ゴブリンロードの落としたそれは金属鎧で、防御力は今の物よりもずっと高いものだ。


 装備に必要なステータスは十分に満たしており、今すぐに装備することが出来た。


「何て言うか……変じゃないか?」


 胴体だけが金属鎧で手甲や下半身などの部位は皮なのだ。


「レザーアーマーになら見た目を変えられるけどどうする?」


「お願いするよ」


 どうやら見た目の変更は自由にできるらしい、一式そろえないと見た目が微妙というのは個人的にあまり好きではない思う所だ。

 しかし見た目でその人の大雑把な強さがわかるというメリットがある為に特にPvPではむしろ見た目は変えられない方がいいという考え方もできる。

 この世界ではファッション性に問題が出てしまう事への考慮が優先されていると見ていいようだ。


「ほいっと」


 ミネルヴァが少し強く光を放つ、すると俺の装備していたプレートアーマーがレザーアーマーへと変化する、防御力に変化は無く見た目は自然なものになっていた。


「さてと……何か目ぼしい物はないかな」


「抜かりないなあ」


 折角の洞窟だ、金になりそうな物はしっかりと回収していきたいと思うのは不思議じゃないはずだ。


 この広い空間というのは露骨に何かありそうなものだ、ゴブリンロードというボスも配置されておりボスドロップだけという事は無い……というか単純に宝箱を見たいという期待が大きい。


「んー?」


 探索してみると一応箱のようなものはあった、どちらかというと石棺で蓋を開けるのも難しそうだ。

 鍵がしてあるようで俺は試しに先ほど拾った鍵を使用する、すると鍵が消滅して石棺の蓋が重い音と共に地面へと落ちた。


「消費アイテムだったのか……でもこいつは期待できるぞ!!」


 箱の中身を漁ると1本の剣が保管されていた、調べてみるとこの剣の名前はロングソードと大当たり! となるようなものではなかった、しかし詳しく調べてみるとどうやらただのロングソードでは無いらしい。

 品質は最高、非常に攻撃力が高く、さらに魔法の効果を高めるという特性があるそうだ、

 魔法の効果を高める効果は恐らくこのフラーに刻まれた文字によるものなのだろう、試しに装備してみると非常によく馴染んだ。


「いいね! これは見るからに当たりの部類なんじゃないかな?」


「どうなんだろうな、でも確実に今の剣よりもずっといいのは確かだ!」


 早速装備を変更する、その時に気付いたのだがバスターソードはかなり消耗していたようで残りの耐久値は四分の一程度しか残っていなかった。

 逆に店で買った安い武器でもあれだけ戦闘してここまでしか耐久が減っていないと考えればキチンと手入れさえすれば武器が壊れると言う心配はなさそうだ。


「そういえばエリスは盾は持たないの?」


「盾か、また村で探してみるか」


 他に漁れそうなものはなく、来た道を引き返す。

 ファストトラベル可能な魔法でもあれば楽なのだが俺にはまだ使えないらしい。


 魔法だが気になる項目があった、雑用魔法だとか書かれていた部分だ。

 どうやら戦闘に関係のない魔法の総称のようで、自動取得、体を綺麗にする、金銭やり取りの自動化など色々なものがあった。

 というか攻撃魔法や防御魔法に比べて名前が適当なのだ、まるでオプション欄を覗いている気分だ。


 その中に1つだけ興味を惹かれるものがあった、それは【BGM】これまた説明不要な魔法でイヤホンで聴くように音楽を鳴らす事が出来る魔法だ。

 この世界での音楽だけではなく、自分の記憶にある音楽も再生可能らしく退屈はしなさそうだ。


 鼻歌を歌いながら村へと小走りで帰る。


「何歌ってるの?」


「前世で聴いてた歌さ、名前はなんだったかな、ジャンルはメロスピだ」


「私にも聴かせて!」


 落ち着いた雰囲気の平原に似つかわしくないスピード感ある音楽が響き渡る、メロスピとはメタルの一種で数少ない友人の影響で聴くようになったジャンルだ。


「なんだか落ち着かないね」


「まぁ好みの分かれるジャンルだろうしな、讃美歌とかの方が好きか?」


「まぁ……嫌いじゃないけど好みでもないかな、こう、キラキラした音楽とか好きだなぁ」


「キラキラなぁ」


 村へと入り依頼達成の報告をする、村に入る前にBGMは消しておいた、流石に迷惑になるからな。

 ゴブリンロードを倒したと報告した時にはかなり驚かれた、レベル看破はあるが弱点看破と違い思い浮かべただけではレベルは分からなかった、恐らく個体によってレベルが違うのだろう。


「あれだけやって全部で3000zか……」


 この前のスライムの素材を含めた必要のない物を売却しても報酬含めその値段だった、案外冒険者というのはブラックなのかもしれない。

 ゴブリンロードに関しては1万zくらいはくれてもいいだろう、というか100万くらいくれというのが本音だ。


「まぁそういう決まりだから……」


「アレは本当は逃げイベだったって事にしとくか、ウダウダ言ってもどうにもならないしな」


 ちなみにバスターソードは残してある、買った翌日に売却というのはゲームであれば普通にするのだが、流石にここでそれをするわけにはいかない、それに万が一このロングソードが壊れた時の予備にもなるしな。


 パンとジャムを買って帰宅する、もっと金が貯まるまではこのケチ生活が続く、問題は次の仕事をどうするかだが……明日考えよう、俺は200zで購入したリペアツールを使用してバスターソードの耐久値を回復させる。

 多少物を買い込んだおかげで俺の所持金は1000zだ、しかししばらくは買い物をしなくていい為に気は楽だった。


 そろそろ寝ようかと思っていた頃に家のドアがノックされた。





 時は少し巻き戻る。

 エリスが洞窟の攻略を終えて丁度村へと戻っている頃、彼らの後ろを歩く1人の少女がいた。


「ん……人?」


 少女は綺麗な金髪をポニーテールにまとめており金属鎧を身にまとっていた。

 エリスはそれに気付かずミネルヴァと会話をしている、ミネルヴァを見る事の出来ない彼女からすればエリスが1人でベラベラと話しているように見えた。


「狂人か何か……? 危ない人なら倒した方がいいのかなぁ」


 彼女もまた1人で呟く、次の瞬間平原に不釣り合いな音楽が鳴り響く。


「メタル? どうしてまた……もしかして……!」


 エリスの入っていった村へと彼女も入る、しかしそこでエリスの姿を見失ってしまった。

 門番に話を聞きエリスの事を聞き出し、彼女はエリスの家を探す事にした。

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