第4話

Blam! Blam! Blam! Blam!


「こっちだ。バッタ野郎!」

 マックスはアサルトライフルをセミオート射撃!

 だが電界装甲によって弾丸は逸らされ地面に落ちるか、そばの壁を砕いた。


「お前はこっちだ。来てみろオンボロが!」

 ジェリコは盾を構え、携行型M4重機関銃の引き金を引いた。

重く、そして乾いた連続射撃音。次々と弾丸が射出され、吐き出された薬莢は地面へと落ち、金属の音を響かせた。

 だがしかし電界装甲を前に、この暴力的な金属の雨も本来の威力を発揮できずにいた。

 自立兵器グラスホッパーも戦闘行動を開始した。


 まずは目論見通りだった。マックスとジェリコは互いに反対方向に走ることで二機を引きはがすことに成功していた。

 ジーンはジェリコから少し離れた位置を走っていた。狙撃に最適な角度と位置を探しているのだ。

「おい、まだかジーン? 弾だって安かねぇんだぞ!」

「まだ移動中だ、角度が悪い。……ていうか、少しは節約して撃て! どうせ今は有効打にならないぞ」

「撃つ時は撃ち続ける! それが俺のやり方だ! ハッハァー!!」

「これだからトリガーハッピーは……」


Blam blam blam blam blam blam blam!!


チェーンガンのけたたましい音が響き渡り、ジェリコの盾を激しく打ち付けた。

「盾で受けすぎるな! 壊されるぞ!」

「うるせえ! わかってる!」ジェリコは撃ちながら後退し、民家の影に隠れた。

「クソ! 腕が痛むな、俺も電界装甲が欲しいぜ……」

盾から伝わった衝撃で痺れた手を見ながらジェリコは愚痴をこぼした。


 キイィィィィン!


 電磁加速銃の砲身から甲高い音が聞こえていた。チャージは既に最大であった。

「いけるぞ! 奴の体を少しだけ右方向に誘導してくれ!」

「まかせろ! 鈍間のポンコツ野郎が! こっちに向きやがれ!」

 ジェリコとジーンは息の合った連携を見せていた。

 彼ら二人はしょっちゅうケンカするような仲であるが、お互いの役割と、その腕は誰よりも信用していた。


 グラスホッパーの電界装甲を撃ち抜く効果的で最適な角度をジーンは捉え、ジーンは引き金を引いた。

 F&B社製E03式超電磁加速銃の長い砲身のスリットから、淡く青白い光と火花が漏れた。

 加速され、射出された弾体がグラスホッパーの電界装甲発生器に着弾した。


Bleep!? Bleep!?


Blam blam blam blam blam blam blam!!


 すかさずジェリコが追撃を加えた。暴力的金属豪雨がグラスホッパーの装甲を激しく打つ。……だが手ごたえが無い!

「あん? ……当たってんのに効果ねぇのか?」

「威力減衰だ。電界装甲の破壊が不十分だったんだ。……奴はまだ健在だ! 避けろ!!」


Peep! Peep!


 ロックオン警報!赤い閃光がジェリコに放たれた!

 直撃!白い煙に包まれジェリコの姿が見えなくなった。

「ジェリコ!」


Pop!Pop!


 ジーンは煙幕弾を射出し、ジェリコもとに走り出した。

 特殊金属片の混ざった煙幕はカメラの認識機能を著しく低下させる。そしてそれはパワードスーツも同じだ。ジーンはHUDに頼らずバイザーを開けて有視界モードで走った。

「ジェリコ無事か?」

「今は……なんとかな」

ジーンは仰向けに倒れるジェリコの首根っこを掴むとそのまま引きずり民家の影に隠れた。

盾は融解し、大穴が開いていた。


「レールガンのチャージがいつもより時間がかかる。この暑さのせいだな」

ジーンは物陰から様子を探りながら言った。

「そうか……。少しは励ましの言葉が欲しいもんだけどよ。……腹にも大穴開いてんだろ? 不思議と痛くないもんだ」

 いつもは強がっているジェリコであったが、その声は弱々しかった。

「励まし? ばか言え。お前は無傷だよ」

変なものを見るような目でジーンは言った。

「無傷……?」

ジェリコが見るとそこには穴どころか、すこし焦げた跡がある程度だった。

「直撃を喰らったはず……なんでおれは無傷なんだ?」

「……水だ。レーザーは腰にあった水筒に当たって、沸騰した水の蒸気がレーザーを減衰させたんだ」

何という幸運!たまたま腰にぶら下げていた水筒がジェリコを救ったのだ!


「なるほどな……ついてるな。終わったらカジノ行くとしようぜ?」

さっきまでの弱った様子は既になかった。

「まったく……もう動けるだろ? ジェリコ」ジーンはバイザーを降ろしながら言った。

「当然。仕返しといこうぜ。次は何秒稼げばいい?」

ジェリコは立ち上がり、残弾を確認した。充分とは言えないがまだ残っていた。

「そうだな。百二十秒稼いでもらおうか」

「百秒にまけてくれよ、カジノで勝ったら奢ってやるからさ」

「こればっかりは無理な相談だな。それに賭けが弱いのは何があっても変わらねぇよ」

「うるせぇ」

 二人は少し笑い、そして物陰から飛び出した。

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