へび娘さん

やましん(テンパー)

『へび娘さん』

 いまははるかなむかし、遠い異世界での話しである。

 この世とはなんの関係もない。


 ある夏の日の夕方のこと、その男は、薄暗く、やや涼しい山道を散歩していた。


 すると、足元から声が聞こえる。


「あのう、ちょと、ものをお尋ねいたしますう。お尋ねいたしますう。」


 少女のような声である。


 何気なく下を見ると、ちいさな蛇さんが釜首をもたげて、尋ねているのであった。


「これはまた、不思議なことだ。何を尋ねたいのですか?」


「はい、あたくしは、この二つほど向こうの山からまいりました。長老さまより、『『やましん』という人間を、その家で、噛み殺してまいれ』、と命じられましたが、なにしろこのあたりは来たことが無く、迷いました。あなたさまは、『やましん』という人のおうちをご存じないでしょうか?」


「ああ、それならば・・・・しかし、街の中は危険ですよ。外で噛み殺した方がよかないですか?」


「いいえ、それはだめです。『その家で・・・』との長老様の御指図ですから。」


「はあ・・・律儀な事ですなあ。長老様は、その『やましん』とかに、恨みをお持ちなのか?」


「いえいえ、恩義のある会社の偉い人から頼まれたと申されておりました。」


「はあ。そりゃあまた、律儀な事ですなあ。じゃあ、お教えいたしましょう。」


 男は、街の中のその小さな館までの道を詳細に教えたのである。


「ありがとうございます。いつか、あなたさまには、良い事があるでしょう。では。」


 へび娘は、速足に去って行ったが、さきほどより、比べ物にならないくらいに、大きくなっていた。


「いやいや、良い事は、今あったのです。」


 男は、そのまま、道を急いだのである。



 **********   **********



「あいつ、どうした?」


 課長が尋ねました。


「おとついから、行方不明なんだそうです。」


「あらま・・・・支店長に伝えておこう。さぞ、お喜びであろうから。」



 ************   👼👼👼  ************




                    出典 『やましんの妄想譚』

























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へび娘さん やましん(テンパー) @yamashin-2

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