第19話 攻略開始
サーシャがおはようのキスをしてくるというハプニングがあったが、今は朝食を終えリビングに集まっている。
レベルも上がり、これからどうするか話し合いをしている最中だ。
「昨日の様な事にならない様、こちらから攻めるのがいいです」
「それには私も賛成~」
二人とも昨日と意見は変わらないらしい。
「攻めると言っても何処を攻めればいいんだ?今はアルカナ以外はヴァギールに攻め落とされてるんだろ?」
「なら、ヴァギールを攻めちゃえば終わりじゃない?」
「それだとゲームクリアにならないんだよ」
「そういえばそうだったわね」
ヴァギールだけを攻略してもゲームクリアにはならない。
マラス地方とグラムス地方のヒロインを攻略してハーレムを作らなければならないのだ。しかし、今はその二つの領地はヴァギールに攻め落とされてしまっている。実質攻略不可能になってしまっているのだ。
俺が頭を抱えていると
「その事でしたら心配ないかと思います」
サーシャがそう切り出した。
「どう言う事だ?」
「確かに今はアルカナ以外はヴァギールの領地ですが、元々の領主がその地を治めているからです」
「という事はその領主を倒せばそこの領地は俺達の物になるってことか?」
「はい、その通りです」
これは光明が見えてきたぞ。
ヴァギール以外の元領地に行って、そこの領主を順番に倒していけばいい。
その途中でヒロインに出会うかもしれない。
「なら、何処から攻めればいいと思う?」
「昨日捕虜にした奴らの領地を聞き出してそこから攻めるのがいいと思います」
「なら早速収容施設に行ってみるか」
そう話が纏まりリビングを出ようとした所で、ふと気になった。
作戦会議のときいつも鞘華は大人しい。
もしかして話に付いてこれないのだろうか?
「何? どうしたの?」
「いや、何でもない」
鞘華を頭が弱い子扱いは止めよう。
鞘華には鞘華の考えがあるんだ。
そう自分に言い聞かせ、リビングを後にした。
宮殿を出て左に真っすぐ行くと街の片隅に収容所がある。
昨日襲ってきた連中は皆この収容所に入れてある。
看守に挨拶をし、奥へと歩を進める。
そして、一つの牢屋の前で立ち止まった。
「よぉ、旦那。何か用か?」
そう俺に話しかけてきたのは赤髪の男だ。
「ちょっと聞きたい事があってね」
「そうかい。何が聞きたいんだ?」
「お前たちは何処の街からやって来た? 巧の指示といってもわざわざヴァギールから来た訳じゃないだろう?」
「つまり報復か」
「それだけの事をしただろう?」
「へっ、違ぇねぇ」
「お前たちは何処の街から来たんだ?」
「まぁ今の俺に拒否権は無ぇからな。元グラムス地方だよ」
「今でも領主は元気でやってるのか?」
「殆どタクミ様の操り人形だけどな」
「お前にとって巧はどうだ? 信頼できるか?」
「信頼なんかしてねぇよ。金だけの関係だ」
「そうか。悪かったな急に来て」
「いいって事よ。こっちも暇つぶしになったしな」
そこで会話を打ち切り収容所を後にした。
因みにサーシャと鞘華は入り口で待つ様に言っておいた。
鞘華はともかく、サーシャが何をするか分からなかったからだ。
サーシャは敵は殺すべきと主張していたので万が一に備えて残ってもらった。
「どうでしたか? 何か有益な情報は手に入りましたか?」
「ああ、奴らはグラムスから来たらしい」
「それじゃあ、グラムスに攻め込むの?」
「それも含めてエリーの意見も聞いてみようと思う」
それから宮殿に帰りリビングに集まった。
今回はサポート約であるエリーも一緒だ。
「そうですか、奴らはグラムス地方の輩でしたか」
「ああ、それでグラムス地方に攻め込もうと思うんだけどどう思う?」
「そうですね、敵の戦力は昨日で大分削がれたと思いますので宜しいかと」
「グラムスまではどの位かかる?」
「大前提として、他の領地に入るにはソオヘを通過しなければなりません」
「ソオヘ?」
「ソオヘは中立国で各領地を繋ぐパイプ役のような国です。どこの領地に行くにしても必ずソオヘは通らなければなりません」
江戸時代の関所の様な物だろうか。
「先ずはソオヘに行き、情報収集等した方が宜しいかと存じます」
「ソオヘへはどの位時間掛かるんだ?」
「およそ半日程度で着きます」
「何か必要な物とかは?」
「特に御座いません。ソオヘの守衛にマサキ様の名前を伝えればそれで大丈夫です」
「わかった、ありがとう」
今の話を纏めて二人に話す。
「私はいつでも準備はできています」
「正樹が行くなら私も行くわ」
「なら、今から一時間後に出発しよう。各自忘れ物無いように」
そう言ってその場は解散となった。
部屋に戻り旅の支度をしていると
「何だか本格的になったきたね」
「そうだな」
「正樹は高レベルの私が守ってあげる」
何とも逞しいセリフだが俺は反論する。
「何いってるんだ。俺は鞘華を守るって言っただろ?」
「でも、私も正樹の力になりたいの!」
「ありがとう。それじゃあ鞘華には俺の心を守って貰おうかな」
「心?」
「どんなヒロインが出てきても鞘華の魅力で引き止めてくれ」
「うん、わかった」
そうこうしている内にあっという間に一時間が過ぎた。
宮殿の入り口に行くと既にサーシャが待っていた。
「待たせてわるいな。一声掛けてくれれば良かったのに」
「声を掛けようとしたのですが何やら良い雰囲気でしたので」
鞘華と二人して顔を赤くする。
まさかキスしてたの見られてないよな?
「全員揃った事だし出発するか」
「おー!」
「はい」
俺達はソオヘに向かって歩き出した。
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