第45話 決着
「神凪生徒会長と茜は?」
僕の問いに和哉は少し困った顔をした。
「いるにはいるんだが……」
そう言って教室の隅の方を指差す。そこには石化した神凪生徒会長と茜が微動だにもせず立っている。
「和哉! 妖魔を倒したら石化が解けるはずじゃないの?」
「ああ、俺もそう思っていたんだけど、どうやらそう簡単にはいかないみたいだな」
僕は脱力した身体に、もう一度力を入れ直して立ち上がった。
「僕がやってみる」
「未來、大丈夫?」
紅緋の心配そうな表情を、僕の笑顔で打ち消す。
「やってやるさ! 僕の能力が少しでも役に立つのなら!」
「うん」
僕は右手を前に突き出し、左手で右手首を持って支える。そしてさっきと同じように心で強く思う。
石化を解いて元に戻す!
僕の右手の手のひらから淡く薄い青緑色の光が現れる。その光はゆっくりと神凪生徒会長と茜を包み込んでいった。
ピキッ!
石化している二人の身体に無数のヒビが入り始める。そのヒビはやがて全身に広がり、二人の身体の外殻が剥がれるようにポロポロと床へ落下した。
そして、最後の一欠片が床に落ちた時に二人は目を醒ました。
「えっ、ここは……あ、あっ、そうか、私たちも石化されたのね」
神凪生徒会長は状況を理解出来ない様子で独り言を呟いたが、すぐに慌てた様子で僕たちに聞いてきた。
「あの妖魔は!」
「僕たちが倒しました」
僕がにっこりと微笑むと、神凪生徒会長は僕と紅緋を見て驚いた顔した。
「新くんと……紅緋さん? どうしてここにいるの?」
「和哉から紅緋が生きているということを聞いて連れ戻しに行っていました」
「そうなの?」
神凪生徒会長は和哉に尋ねる。
「まぁ、俺がとある人物から情報を貰っただけなんだけどな」
「すみません。生徒会長、僕がもっと早く能力を使いこなせるようになってたら、生徒会長の石化も防げたかもしれないのに……」
「ううん。それよりも私は、新くんと紅緋さんの元気な姿が見れて嬉しいわ」
「ありがとうございます」
僕は自分のことよりも、僕たちのことを心配してくれていた神凪生徒会長に心からの感謝を込めて頭を下げた。
「さてと、後は私の仕事ね」
神凪生徒会長はそう言うと、スマホを手にしてテキパキと指示を出している。
程なくして、サングラスに黒服姿の特殊修復部隊の人達が来て、破壊された箇所の修復を忙しそうにやっている。今回は特に、破壊された場所が広範囲に及ぶ為、作業自体が大変なんだそうだ。
僕はその間に、茜と一緒に石化された月白のところに行って石化を解いた。
月白は僕に『すまない。少し油断してしまった』と苦笑いし、そんな月白の首に茜が飛びついて、子供のようにえんえんと泣きじゃくった。
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