第12話 ジョーカー

「誰だ!」


 茜がすぐに臨戦態勢に入る。


 何も無い筈の天井に、徐々に形らしきものが浮かび始める。赤、青、黄、緑、紫、カラフルな色が現れ、それが人型を形成していく。黄色の髪の毛に赤色の帽子、真っ白の顔に赤色の丸い鼻と口、右目の周りに赤色の鳥の羽の模様と目の下に赤色の涙、左目の周りに青色の剣と目の横に青色の小さなハート、黄色をベースにしたドット柄の上着、黄色をベースにしたストライプ柄のズボン、赤色の靴と白い手袋。


 まるでサーカスのピエロだ。


「皆さん、お揃いですね。どうもお初にお目にかかります。妖魔界序列十三位ジョーカーと申します」


 ジョーカーは左手を後ろに回し、恭しく右手を前に差し出して腰から前屈みになりお辞儀をする。


「で、妖魔が何の用だ!」


 和哉がジョーカーに声を飛ばす。


「ほお〜っ、これはまた、無作法な言い回しで……」


「うるせえ! さっさと言いやがれ!」

「それでは…………と…………宜しければ、そちらの新様を頂きたいと思いまして」


 ジョーカーの真っ赤な口がニヤリと笑う。そんなジョーカーに苛立ちを隠せない和哉は、カッターシャツからネックレスを引き出し浅葱を呼び出す。


「やれるかよ! 浅葱! 出番だ!」


「月白!」


 茜も続いて、腕輪を前に突き出し月白を呼び出す。そして二人と浅葱と月白は前に出て、未來を守るように位置取った。


「やはり、そうきましたか」


 ジョーカーは慌てる様子も無く笑っている。そして僕の方を見て言った。


「二対一ですか……ハンデが足りないですね。新君、貴方の精霊も呼び出して下さい」


 人を見下したような言葉に和哉が怒った。


「浅葱! 殺れ!」


「わかりました! 和哉さま!」

「エナジーソーサー!」


 浅葱は青緑色の透明な円盤状のものを作り出し、それを次々とジョーカーに向かって投げ放つ。


 ジョーカーは何処から取り出したのか、黄色と緑色のジャグリングクラブを手にして、浅葱が放つエナジーソーサーを軽々と受け流す。


「チッ!」


 和哉はジョーカーの余裕のある姿を見て舌打ちをする。


「月白! 行け!」


 浅葱の攻撃がかわされたのを確認して、茜は月白に攻撃を命じた。

 月白はジョーカーに向かって真っ直ぐに駆け出す。ジョーカーはそんな月白にのんびりと話し掛けた。


「月白さん、貴方は妖魔ですよね。何でそちら側にいて、同じ妖魔である私と戦おうとするのですか?」


「妖魔とはいえ、私には私なりの思いがあり、そう簡単には譲れないものがあるのです」

「そうですか、ならば、私も貴方を排除するしか無いようですね」


 そう言うとジョーカーはジャグリングクラブを消し、ジャグリングボールを手に出現させる。そしてそのボールを向かってくる月白に飛ばす。

 月白は飛ばされたボールを警戒して走りを止める。次の瞬間、そのボールは炸裂して爆風で月白を押し戻した。


「月白!」


 茜は月白を心配して声を上げた。


「大丈夫だ」


 月白は爆風で意識がはっきりしないのか、頭を振りながら茜を見る。


「しかし、あのボールは厄介だ。これでは近づけない」


 月白とジョーカーの間の空間に、無数のボールがばら撒かれていた。


「さて、これであとは貴方の精霊のみとなりましたが?」


 ジョーカーは僕の方を挑発するように見ている。

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