Ufer

図書館を出発し、新たな仲間ケープペンギンが加わったロンメル一行。

そのまま、しんりんちほーで一泊し、一行は目的地、みずべちほーへと向かう。



お久しぶりです。

なんとか生きてます(生存報告)

────────────────────────

日付けが代わり、東の空がうっすらと明るくなり始めたころ。


朝霧が立ち込み、しんりんちほー全体がシーンとした静けさに覆われている……


そんな朝霧立ち込めるしんりんちほーの一角には装甲車が停まっていた

ハッチはキッチリと閉じられ、開きそうには無いが、微かに空いた覗き窓から光が漏出しており、なにやら大きな影が蠢いているようだった。


大きな陰の正体はロンメルだ。

彼の側に置かれたランプが彼の陰を大きなモノとして映し出す。


彼は手に持った本を黙々と読み進めている。

時折、ある写真のページへ戻ったりしながらも、ただただひたすら紙をめくっている。

ただひたすら、熱心に……

数十分、いや数時間は読んでいただろうか。

ロンメルは本を閉じ、目の前の机に本を置くと、おもむろに背伸びをするのだった。



………………

…………


鍵を外し、ハッチを開く。

寝不足の頭が鉛を詰めたように重く感じられた……

装甲車の外へと出て、新鮮な外の空気を頭へと送り込むと、寝不足の頭が徐々に軽くなっていく。

目覚ましに、車内から持ってきた濡らしたタオルで顔を拭く。


辺りを見回すと、東の空がうっすらと明るいことに気が付く。

図書館で借りた本を読んでいるうちに日を跨いでしまっていたようだ。


時計を見ると、長針がちょうど5の所にきていた。

夜明けが近い。

太陽も直に顔を覗かせるだろう。


しかし、昨日も本当に色々なことがあった。

セルリアンしかり、博士助手の二人組しかり、ケープペンギンしかり。

だが、一番の大きな出来事といえば、ラッキービーストと名乗る者との通信だろう。

ここ、ジャパリパークのガイドロボットなるものらしい。ロボット……というものはよくわからないが、人ではないことらしい。研究者が騒いでいた噂の人工知能とかいうやつだろうか……


「あれ?ロンメルさん。もう起きてたんだ~!」


不意に、後ろから声を掛けられる。

振り向くと、ケープペンギンがテントからひょっこりと顔を出していた。


「起きたというか徹夜だが……それより、おはようだな。」


「うん、おはよう!」


彼女がテントから出てくる。

まだ寝起きで眠いのか、目がしょぼしょぼしていた。


「……ほら、これで顔を拭いてこい。」

そう言って、水で濡らしたタオルを投げ渡す。


「ありがとう!ちょっと顔拭いてくるね~。」

ケープペンギンがタオルを持って、テントの裏側へと消えて行く。


今日1日限りとはいえ、賑やかな運転になりそうだ。







「…………」ジッ


……───

朝6時ごろ起きてきたアライグマ達にも濡らしたタオルで顔を拭かせる。


朝食は博士たちから渡された、ジャパリマンを食べることにした。

朝食を終え、直ぐに広げていたテント等を片付け、アライグマ達に装甲車に乗り込むよう指示する。


自分も運転席のハッチから滑るようにして入り込む。

鍵を差し、エンジンを掛ける


威勢の良いエンジン音が聴こえてくる。

今日もエンジンは絶好調のようだ。


「出発しんこーなのだ!」

いつものアライグマの掛け声と共にアクセルを踏む。

目的地はみずべちほー。

図書館で貰った地図によれば、距離はもうそんなにない。3時間もあればたどり着くだろう。


道路に人気が無いため、最初からどんどんスピードをとばしていく。

速度計は既に時速50kmの所を指していた。

大きさ、色、形、様々な木々が現れては、視界の端へと流れ消えて行く。

覗き窓からだと視界はあまり良くは無い。

が、後ろの三人が顔を出しているハッチからは心地よい風と森という緑の落ち着いた世界が広がっているだろう。


「うわぁ!!本当にはやーい!すごいすごーい!」

後ろから、ケープペンギンの声が聴こえてきた。

眼前に広がるスペクタクルにいささか興奮気味のようで、心なしか声が上擦っていた。


「投げ出されないようにしろよ~?」

湖畔の件を踏まえて、注意換気の意図を含め、そう後ろに声を投げかける。


「はーい!」という元気な声が3人分、きっちりと返ってくる。アライグマも湖畔で懲りたらしい。

流石に、また体を乗り出すようなことはしなかった。


やはり、と言うべきかケープペンギンが一人、輪に加わったことによりだいぶ車内が賑やかになった。

ケープペンギンは、とにかくぺぱぷに詳しく、特にフルルというメンバーが好きらしい。専ら、その娘の話がメインとなっていた。

アライグマとフェネックも、今までの冒険の話で場を盛り上げている。

今のところは、フェネックも昨日の夜のような変な様子も見られない。

いや、昨日の出来事は疲れた自分の脳が見せた幻覚だったのかもしれないな。

今、聴こえてくるフェネックの笑い声を耳に、そう思った……


……二時間ほど走った頃だろうか。

やがて、木々が減り、段々と道も拓けてくるようになり、少しずつではあるが、小さな湖のようなものが増えてくる。


やがて、前方に閉じられたゲートが見えてくる。

地図によると、ゲートより先がみずべちほーになるらしい。


ゲートをアライグマ達に上げてもらっている間に、ゲートを潜り抜ける。

みずべちほーに入った、ということは目的地までは直ぐだ。


みずべちほーはその名前の通り、水辺が多い。

大小様々な湖が存在し、なかには小さな島があるほどには大きいものもある。


そのなかで最も大きな湖、そこが今回の目的地だ。

ケープペンギンいわく、その湖の中央部にあるライブステージ付近に、ぺぱぷなるアイドルユニットがいるとのことだ……


ガタガタと音を立てて、舗装された桟橋を渡る。

みずべちほーは前にも述べた通り、殆どが湖で形成されているのだ。

当然、移動も湖内の島や架けられた橋を渡ることになる。

パーク内の他の建造物のように、劣化していないか心配だったが、難なく渡れるようで杞憂に終わった。

また、途中の陸地には、休憩所や水上植物園らしき施設が残っていたりと、ヒトの遺物らしきものもチラホラと見掛けることが出来た。


中でも最も印象に残ったのは、小型ボートが沢山ならんだ船着き場だ。恐らく、観光客向けとして使用されていたのだろう、可愛くカラーリングされた小舟や少人数へ向けたガイド用の小型船もあるようだ。

全盛期、人が居たときは相当賑わったのであろう。

しかし、どれも皆朽ち果て、その船体は植物や小型生物の隠れ家となっているようだった。


別にそれだけなら、船着き場なんて特に印象に残ることもないだろう。そこら中にある人の遺物と変わらないからだ。


しかし、この中に、たった一艘だけ、異様な空気を放っているボートがあった。

観光用ボートの中に浮かんでいるのは、あり得ないほど異質なソレ。

船体には溶岩が固形化したものがこびりついており、

艦主と艦尾、そして艦中央に付いていたその異様なモノは、錆び、朽ち果ててはいるものの、かつて獲物を穴だらけにするために火を発したであろう銃口は鈍く光を反射していた。


しんりんちほーといい、この船着き場といい、武装したヒトの遺物が残っている。果たして、この島で何があったのだろうか。

彼女アライグマ達は使い方も、そもそもあれが何なのかは知らないようだ。が、確かにあれはヒトの負の遺産だろう。


セルリアンという異形の怪物。

人が繰り出した軍という遺物。

火山から出てくるというサンドスターという謎物質。


─まるでベタなSF小説みたいな展開だな。

と、思わず苦笑してしまう。


小説なら、わたしはからこの荒廃した世界にやって来た主人公といったところか…?


まさかな……

そんな似合わない役を渡されても、困るだけだ。

自分なんて、道端の雑草ぐらいのものだ。


数年前、自分が言った

『自分の人生は、自分で演出する』

ということばが、嫌に重く感じられた……



「あ!見えてきたよー!」

ケープペンギンの声で、意識を現実に戻す。


「なるほど~あそこが ぺぱぷ のライブステージなのか~!」

とアライグマがその声に反応して、言った。


装甲車の向かう先。

まっすぐな一本道の向こう側に目的地である島が見えてきていた。

地図の説明を見たときは俄には信じられなかったが、なんでも島一つ丸ごとライブステージになっているらしい。

少し離れたここからでも、大きな照明器具に、それが照射するであろう立派なステージが見える。

それだけで、真実なのだと伝わってくる。


「結構大きな島だね~」

と、そうフェネックが言葉を漏らした声に、

「そうだな」

と返す。


もう数分と掛からない内に、到着するだろう。

ここでケープペンギンとはお別れだ。

そう思うと、たった半日過ごしただけだが、とても寂しく感られた。

それでも、装甲車は進んでいく。

目的地はもうすぐだ……

──────

───

……そのときだった


突如、轟音が辺りに響き渡る。

水柱が空高く舞い上がったかと思うと、視界を塞がれる。同時に、大きな振動が伝わってきた。


慌ててブレーキを踏みこむ。


「きゃあ」

という短い悲鳴が後ろで聴こえた。

が、気にしている余裕はない。


「ね、ねぇ、ロンメルさん。あれ───

舞い上がったか水が、どしゃ降りの雨のように降り注ぐなか、フェネックの焦った声が聴こえてくる。

水柱がなくなり、視界が段々と回復するなか、示された方向を向く


視線を向けた先では、水上を黒いナニカがこちらに接近してきていた

……

…………

────────────────────────

『Ufer(みずべ)』end


お久しぶりです。

今さらなんですけど、こういう後書き的なのってノートの方が良かったりするのかな……


いや、まぁ、はい。

更新が遅くなった言い訳をしますと、忙しかったんです……

学年末なので、部活の研究発表会とかいろいろゴッチャゴッチャしてました


ほんっとうに申し訳ないです。

しかも、大してお話進まないという




さて、お話は変わりますが、道中にロンメルが見つけた船。何だと思いますか……?


銃口という言葉から、大体は察して頂けるかと思いますが。軍艦です。

といっても、戦艦とか、駆逐艦とか、そんな大きなものではなく、魚雷艇だとか哨戒艇といった、小型のボートに少数の火器を載せたやつ、という感じです


いや~、船体に溶岩がこびりついているとか、セルリアンとの壮絶な戦いが、きっとあったんでしょうかね()



次は早めにあげたい(願望)


感想、質問、アドバイス、誤字脱字等々ありましたら気軽にお願いします


次回『ボート』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る