Panzer vor!
砂嵐の中、車内で対面した『砂漠のキツネ』。
話し合いの結果、アライさん達に付いていくことにしたロンメル。この先、どうなるのか……
物音ひとつしない静かな砂漠の夜、普段なら光すらもない暗闇なのだが、その日は違った。
何もない殺風景な景色が広がる砂地に、1両の装甲車と、テントが貼られていた。
その装甲車から明かりが漏れだし、辺りを少し明るくしている。その明かりの中に大きな黒い影が映る。
中に誰かいるようだ。
────────────────────────ロンメルside
ザザザッ ザザザ ザザザッ
「……繋がらない、か。」
『ザザザッ』という音しか発しないヘッドフォンを外して、無線機を見る。
かれこれ数時間程経過しただろうか……
「やはり、誰もいないのか……」
自分と同じようにこの世界にとばされた者が居るんじゃないか?そう思い無線機の電源を着けたもののどの周波数に合わせようともヘッドフォンからは雑音しか流れなかった。
アライさんやフェネック達も寝てしまったし。
自分もそろそろ寝ようか……
一度、車外に出て大きく息を吸う。
砂漠の乾いた空気が体に入り込むのを感じた。
大丈夫だ。落ち着こう。
彼女達に付いていけば何か良いことがある気がする
そんな自分の勘を信じよう……
────────────────────────翌日───────────────
「出発進行なのだ!」
アライグマの掛け声と共に装甲車を発車させる。
とりあえず、アライグマの指示に従って帽子泥棒がいる方角とやらを目指す。
「アライ。ちょっといいか?」
「どうしたのだ?」
「その帽子泥棒はどの方角にいるんだ?」
「えっーと(クンクン)……あっちの方角なのだ!」
「あっち……か、わかった。ありがとう。」
アライグマが北東を指を指す
それに従い、進路を北東へと変更する。
整地された道でないため、速度は幾ばくか遅いものの時速50kmという猛スピードで砂漠を駆け抜ける。
「おー、すごい速さだねー。」
「スゴいのだ!」
後ろのハッチの2人から歓喜の声が聞こえてくる。
当然だ。このSd.kfz.232は偵察用装甲車として速さをそして、機動性の良さを追究した車両だ。
整地された道なら最高時速85kmを出すことが出来るこの車両は世界を見ても類をみないだろう。
それにここ、ジャパリパークには車両という概念が無いのだ。
これ程速いものは無いだろう。
「はしゃぎすぎて車両から投げ出されないようにしてくれよ?」
「はいよー」
「了解なのだ!」
威勢の良い返事が返ってくる。
砂漠を進む。まるで北アフリカのキレナイカ進攻を思い出させる。一口で砂漠といっても、そこには多くの顔があった。文字の通り一面砂に覆われた砂丘地帯から、土と石ころだらけの土漠、それに岩山の続く高原地帯。高原地帯では風の浸食によって作り出された神秘的な光景も目に出来る。少し標高の高い地帯だと、風に乗った天候次第で粉雪が舞っていた。
ここジャパリパークでもそれは同じだった。
土漠もあれば、岩山もあり、時々粉雪も降ってくる。
典型的な冬の砂漠だ。
本当にここが北アフリカじゃないのか疑いたくなるぐらいだ!
それくらい雰囲気が似ていたのだ。
1日を費やし、ひたすら移動を続けた。
砂漠は過酷な世界だ。
それだけに其処に生息する動物は少なく、そして小柄な動物が多い。
途中の休憩地点で誰かの足跡を見つけたりしたもののフレンズとは誰一人として擦れ違わなかった。
基本的には夜間に行動しているのだろう。
昼間は比較的涼しい場所にいるに違いない。
実際、アライグマ達も自分と出会う前には地下の迷路やバイパスでフレンズと会ったらしい。
そりゃ、誰だってこの灼熱地獄を動きたくは無いだろう。
暫く走っていると検問のゲートの様なものを見つけた。驚いたことに、検問のある橋の下は崖になっていたのだ。
それでいて、こちら側と向こう側で全く気候、植生が違った。ここまで砂漠だったのに向こう側は芝生になっており、遠くには針葉樹林まで見つけることが出来たのだ。一応、彼女達から『ちほー』とやらの話は聞いていたが、本当だったとは。このジャパリパークは不思議な所だ。
「アライ、帽子泥棒はこの先……へいげんちほーだったか。へいげんちほーに居るのか?」
「間違いないのだ!匂いはこの先に続いているのだ」
「間違いないのだな?」
「アライさんは天才なのだ!アライさんにミスなど有り得ないのだ!」
アライさんが胸を張って言う。
「たまに方角間違えたり、明後日の方向に行っちゃうけどね~。」
そこにフェネックからの横槍が入る
「ふぇぇ~、フェネックぅぅ。」
「ふっ、はははは」
不思議と笑いが込み上げてくる。
「ひどいのだ!笑うところじゃないのだ!」
「すまんすまん、いやちょっとな。」
「むぅぅぅ。」
「やはり二人ともとても仲がいいな。」
二人を見ていると彼らを思い出す。二人とも参謀将校だというのにいがみ合うこともせず、互いに信頼し合い、時には協力する彼ら程に親友という言葉が似合う。そんな彼等だった。
その二人に彼女達が重なる。
ニッポンでは、こういうのを『同じ釜の飯を食べた仲』と言うんだったか……
「当たり前なのだ!アライさんとフェネックはしゆうどうたい?ってやつなのだ!」
「アライさーん、それをいうなら一心同体だよー。それだとメスとオス一緒って意味になっちゃうよー。」
「そうだったのだ!アライさんとフェネックは一心同体なのだ!」
「流石だな。息ピッタリだ。」
「ロンメルさんも一緒の輪に入るのだ!」
「私がか?」
「良いんじゃない~?」
「そうか、そうだな……」
私なんかが彼女達の輪に入っても良いのだろうか……
逃げるようにして見上げた空では太陽が雲に隠れ始めていた。
────────────────────────『Panzer vor!(戦車前進!)』end
こんにちは1498です。
相変わらず不定期更新申し訳ないです。
今回のお話は急に次の日になって、急に出発するという急展開になっています。(更に内容も薄い)
アラフェネコンビを上手く書けたかわかりませんが、情景が浮かんだなら幸いです。
アラフェネコンビの書き方についてアドバイスあったら幸いです。
感想、アドバイス、質問等々ありましたら気軽にどうぞ!
余談
ジャングルカフェ楽しかったです。
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