ネクタイを結わねば。

ヘルツ博士

ネクタイを結わねば

会社に通う日々。遠く離れた妻のために、ネクタイを結び直し仕事へ向かう。毎日日付しか変わらない書面に目を通し、いつもの得意先に愛想を尽かされないように行動一つ一つに気を遣う。心身共に滅入ることをただ生活のためだと言い聞かせこなしていく。

出張先のホテルに戻り、昼休憩依頼開けていなかったスマートフォンを開く。彼らは何気ない日々を、何のためにもならない言葉を綴っている。だが、心身滅入ることのないこの行為でも誰かのためになれるのである。

誰かのためになれるなら。

スーツを全て脱ぎ捨て、ネクタイだけを結び直す。何のためにもならない、だが誰かのためになる。ただそれだけのために。


注:これは1人の男に捧ぐ小説である。

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ネクタイを結わねば。 ヘルツ博士 @Hakase10Hz

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