第12話【さかんといて】
その日はやはり、御顔は厭に綺麗で。
棺には咽ぶ程凍る生花がみっちりと傍らに侍り
ゆるぅく眺めればいつものことで
傷んだ底は軋んでは撓んで
底に長く萎びては馨る存在を示していた
奏多の完結。
張付いた花弁を
いちまい いちまい、と。剥いで魅せましょう
つき詰めては 此、腐臭漂う洛縁です。
生前と変わらぬ愛は陶器のみてくれを保ち
倒錯する光量は射し混んでは解けて培養され
この胸には痛々しく私を拒んで
犯しく絡んでは蕩けて煎ってしまうのです
殻ノ匣佇ム独ツ、
彼方に包まれ軽く
棄てられたのでしょうか?
今更 と、嗤いますか?
皮剥いで肉削いで あゝ 八ツと華裂いて
咲いた柘榴の内側には
あゝなんてことか。
大層美しゅう白骨は朱く溢れ
穹から雨が零れ濡れていって
私、浮いてしまいましたの。
屹度匂っているでしょう、もう遅いのでしょう
伏した儘で言って、
エエ様に好いて手折りましたから
口減らしの蛇の抜け殻は大変素晴らしい出来で
後生大事に抱いておりました
ほらご覧のとおり、
極死期に見入ら得て大層豪く皆で捺し逢い盗り合い
そんなんで集めた金銀財宝に塗れていても
おしあわせに。
なんて、
みいんなおなじようには致しませんね
コセイ ってやつでしょうか
同士てなのでしょうね
フツウ ならこんなことにはなりませんよ、
共に折れれば底はどんな獄でも
嬉しゅうて悲しゅうて
お手々にぎってね。
この身繋いで、
腐り擦れ去られても
番 錠前は外れないでしょ。
ふたりほとほたと朱い鎖は
厭々と絡まって 葉擦れやしないでしょ、
陽の光透かして さあ あたたかいって
わらっていこう ね。
このまま朽ちた腕で括って往きましょか
「さかんといてね」
風に揺られるまま心地よく果てまで
地に咲いて 孵りましょう。
見つけてくれなさんな、ひそりておって
底の緋もやはり 御顔はとても綺麗に
褥には咽ぶ程蕩けた生花がはんなりと傍らで
侍り手はゆめうつつと懐いては
毎度のことで。
傷んだ其処は軋み撓んでは
何処かに長く萎びて馨り今 著すだろう。
奏多の感詰めて。
こびりついた汚泥を花弁と散ら科し
いちまい にまい、と、
書き切って ゆきましょか。ねえ、
「泡沫整然と至獄を咲かん解いて夜」
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