第97話 美優とお出かけです

 今日は金曜日。

 今日も平和に学校生活が無事に終わり帰りの支度をする。



「陽一君、帰ろ〜。」



 すると既に帰りの支度を終えた優奈がやって来た。



「ああ、そうだな。」



 俺は、そう言ってぱぱっと教科書などをカバンの中に入れた。

 そして、カバンを持った瞬間、ポケットにしまっておいたスマホが通知を知らせる音がした。



「陽一君、ちゃんと学校ではマナーモードにしなくちゃダメだよ。」

「授業中はちゃんとマナーにしてるよ。でも、バイブだけだとよく分からないからな。学校が終わってからは戻してるんだ。」

「そういうのは学校を出てからしてね。先生にバレたら私も一緒に注意されるんだから。」

「悪い悪い。次からは気を付けるよ。」



 俺は、優奈にそう言ってスマホの画面を見た。

 ホーム画面には美優からのメッセージが来たことを伝えるバナーが来ていた。

 美優から……ということは明後日のことかな。

 そう思いながらラインを開く。



『明日、会えませんか?』



 美優のメッセージは、それだけだった。

 明日は特に用事など何もないので「いいよ」と返事をした。

 するとすぐに返信が帰ってきた。



『ありがとうございます!では、明日、迎えに行きますね。』



 俺は、その後に「何かあったの?」と質問した。それに帰ってきた返事は



『秘密です。』



 ……………まっ、秘密って言ってるのだからいっか。

 ま、まぁ、次の日に運動会なんだからあんまり遠出もしないだろうしな。



「さっ、帰ろうか。」

「ん?どうしたの、陽一君?顔が引きってるよ。」

「さ、さぁ、どうしてだろうな。あはは……」

「ん?」



 優奈は、俺に向けて目を点にして首を傾げていたが俺は気にせずバックを持って教室から出ていった。優奈もすぐに俺についてきた。

 その日は無事に帰って普通に過ごした。

 そして次の日、朝10時頃に家のインターフォンが鳴った。



「それじゃ、行ってくるな。」

「行ってらっしゃい、お兄ちゃん。」



 麗華に挨拶を告げて家を出た。



「お兄ちゃん、お久しぶりです。」



 家から出るとすぐに美優が現れてぺこりと挨拶をした。



「ああ、久しぶり。って言っても毎日連絡してるだろ?」

「もう本物のお兄ちゃんに会えたのですからただの連絡だけでは満足できません。」



 美優は、体をくねくねとさせながらそんなことを言っている。



「それで今日はどうしたんだ?」

「あ、あれ?スルーですか。ぶぅ〜……」

「ほらほら、そんな頬を膨らませてないで。」



 俺は、そう言って両手の人差し指で美優の膨らんだ頬を突いた。すると美優の口からプシューと息が出ていった。



「もう1回聞くが今日はどうしたんだ?」

「今日は、明日のためにお母さんからおつかいを頼まれたんです。主に弁当の具材ですね。それをお兄ちゃんに手伝ってもらおうと思いまして。」

「そういうことか。分かったよ。」

「あっ、少し待っていてください。」

「ん?」



 美優は、車の方に行き、運転席に座っていたお付の女性と何か話していた。

 そして、話が終わったのかこっちへ美優が戻ってきた。



「どうしたんだ?」

「いえ、なんでもありませんよ。それでは行きましょうか。」



 美優がそう言ったのと同時に車にエンジンが掛かる音がして俺たちを乗せずに動き出した。



「あ、あれ?あの車で行くんじゃなかったのか?」

「たまには歩くのもいいと思ったので。ダメでしたか?」

「いや、別にダメじゃないよ。逆にああいう高級車に乗るのは結構緊張するからそっちの方が助かる。」

「ふふ、それなら良かったです。では、行きましょうか。」



 美優は、そう言って右手を俺に差し出してきた。



「ん?」



 俺は、それが何の意図か分からず首を傾げてしまった。



「手、繋いでいきましょ?」

「ああ、手を繋げってことね。確かに車とか通って危ないからな。」

「違いますよ〜。私がお兄ちゃんと手を繋ぎたいから繋ぐんです。」

「そ、そうか。ま、まぁ、なんでもいいけど。」



 俺は、少し照れを隠すように美優から顔を逸らして差し出された右手を俺の左手で握る。

 美優のこういう言動には嬉しいけどどう反応すればいいのか分からず困ってしまう。

 だが、美優は手を繋がれたことに対し喜んでいるようだ。

 美優の手、結構もちもちしてて柔らかいな。



「美優、なんで今さっきからそんなにぎにぎと俺の手を触ってるんだ?」

「えへへ、お兄ちゃんの手の感触を確かめているんです。」



 美優は、そう言って今度は両手でにぎにぎと触ってきた。

 ん〜、なんか、手をマッサージされてるみたいで気持ちいいな。



「って、こんなことしてないでそろそろ行くぞ。」

「はっ、つい夢中になってしまってました。」



 美優は、そう言ってえへへ、と可愛らしい笑みを浮かべた。

 こういう表情にドキリとしてしまうということは俺は、やっぱりロリコンなのかな?まぁ、もうなんでもいいや。



「では、行きましょう。」

「ああ、そうだな。」



 俺は、美優の歩幅に合わせて歩道を歩いて行った。

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