第91話 お義母さんのお節介?

「………ん……んん………」



 俺は、窓から入ってきた太陽の日差しで目を覚ます。



「ん?ここは………あ、そうか、俺、美優の家に泊まって……ふぁ〜……いてて」



 美優の家に泊めてもらったけど寝る場所を用意してもらえず美優の部屋の角を使いそこで眠ったせいか腰がめちゃくちゃ痛い。

 俺は、腰をあまり痛めないようにゆっくりと立ち上がる。



「ふぅ〜……いま、何時だろ?」



 俺は、ポケットにしまっていたスマホを確認する。時間は、午前6時半。いつも起きている時間よりも少し早い。



「美優は………まだ寝てるか。」



 美優は、まだ気持ち良さそうに寝息をたてて眠っている。その寝顔は、まさに天使のようだった。

 あ、やば!つい、美優の寝顔に見蕩れてた。

 俺は、その部屋にいられずリビングへと向かった。

 するとリビングではお義母さんがソワソワとした感じで辺りをキョロキョロとしていた。そして、俺を見つけると慌てたようにこちらに向かってきて頭を下げてきた。



「ごめんなさい!」

「……………え?」



 俺は、急に謝られたので不思議に思い首を傾げた。



「き、昨日、客室に布団は敷いたんだけど陽一くんに言うの忘れてて!本当にごめんなさい!」

「あ、ああ、そのことですか。べ、別に大丈夫ですよ。気にしないでください。」

「でも、陽一くん、腰、痛めてるでしょう?」



 お義母さんは、俺が腰をずっと手で抑えてるのを見てそう言ってきた。



「ま、まぁ、確かに少し痛いですが……大丈夫ですよ。」

「………な、なら、せめてお詫びにマッサージくらいはさせて!」

「い、いや、本当に大丈夫ですから。」

「ほら!はやくそこのソファーに横になって!」



 俺は、お義母さんから無理やり引っ張られソファーにうつ伏せで寝させられた。

 そこにお義母さんが俺の背中に乗ってきて腰に手を当てた。



「じゃ、いくわね。これでも私、結構マッサージは得意なのよ!」

「おうっ!」



 お義母さんが俺の腰を押した瞬間、変な声が出てしまった。

 そこからお義母さんに火がついたのかマッサージする手がどんどん早くなっていった。



「ふぅ、これでどうかしら?」

「は、はい、すごく気持ちよかったです。」

「ふふっ、良かったわ。」



 俺は、今さっきまで感じていた腰の痛みが嘘のようになくなってしまった。

 と、そこでリビングの扉が開いた。入ってきたのはまだまぶたが半開きで眠たそうな美優だった。



「…………………」

「「…………………」」



 少しの間、沈黙が訪れる。



「………お母さん、お兄ちゃんに何してるの?」



 美優の冷たい声が聞こえた。



「こ、これは、ただのマッサージよ?本当よ?ね?美優、話聞いて!」

「はやくお兄ちゃんから退いて!」



 美優は、俺の背中から無理やりお義母さんを引っ張り出した。



「もうっ!私のお兄ちゃんなんだから変なことはしないでよ!」

「むぅ〜、いいじゃない。私も陽一くんとスキンシップをとるくらい。」

「ダメぇ〜!」

「それじゃ、美優、陽一くんの代わりに甘えてちょうだい!」

「嫌!」



 お義母さんは、娘である美優に酷く言われ1人で落ち込んでしまった。



「ちょっと言い過ぎなんじゃないか?」

「いいんですよ。どうせ朝食の時になったらまた前のように戻ってますから。」

「そ、そうなのか。」



 それもそれですごいな。

 そして、時間が過ぎていき朝食の時間になった。美優の言っていたとおり、お義母さんは前みたいにニコニコと笑っていた。



「ほら、お兄ちゃん、私の言った通りでしたね。」

「ああ、さすが家族だな。……あ、それよりも朝食もご馳走になってしまってすいません。」



 俺は、朝食まで用意してもらったことに関して感謝の言葉を述べる。



「もう〜、別にそんなの気にしなくていいわよ。家に泊めたんだから朝食くらい用意するのは当たり前なの。」



 お義母さんは、ビシッと俺に指をさしてそう言ってきた。美優も美優のお父さんもうんうんと頷いている。



「わ、分かりました。それではありがたくご馳走になります。」

「そうそう。最初から素直にそうしてよね。」



 お義母さんは、やれやれと言った感じで朝食を食べ始めた。俺もちゃんと合掌してから朝食を食べ始める。



「味の方は大丈夫かしら?」

「は、はい、すごく美味しいです。」

「そう、良かった。なら、なるべく美優にもこの味を再現してもらわなきゃね。」

「頑張ります!」



 美優は、目をキラキラとさせながらそう言った。

 俺は、そんな美優を見て苦笑しながら朝食を食べていくのだった。

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