第54話 アルバムを見てみると

「ふぁ〜……久しぶりによく寝たなぁ〜。」



 麗華と二人で出掛けてから数日が過ぎた。

 あと、夏休みも半分を切っていて普通ならみんな、宿題でおわれる時期だろう。いつもの俺もそうだった。だが!今回は違う。もう既に終わっているのである。

 だから、俺は気兼ねなくこうやってゴロゴロと出来るのだ。

 これも全て優奈のおかげだな。



「でも、こう考えてみると何もすることがないって結構暇だな。」



 俺は、完全に時間を持て余していた。

 麗華も今日は母さんと買い物に行って家には誰もいないしな〜。

 ……………あっ!そうだ!ずっと気になってたことを調べようかな。

 俺は、そう思い部屋を出て俺が求めている物がある部屋へ行く。



「さてと、どこにあるんだろ。」



 俺が今、探しているものは俺の昔を語ってくれる品物。アルバムである。

 この頃、夢でよく見るあの幼女とかこことは違う家とかそれを調べてみたいのだ。

 どれもどこかで見たことがあるようなそんな懐かしい気持ちがするから。

 アルバムを探すこと1時間。全く見つかる気配がない。今思えば俺、アルバムとかそんなものがあるかどうかすら知らないんだが。誰にも見せてもらったことなしいな。

 だからこそ、見てみたい!よしっ!根気よく探すか!



「あ〜、ダメだ!見つかんねぇ!」



 探し始めて3時間が過ぎた。部屋中は、俺が棚とかにある本とかを全て出してしまったのでめちゃくちゃ汚い。

 そろそろ片付けをしないと麗華と母さんが帰ってきてしまう。そうしたら絶対に麗華から怒られてしまう。

 仕方ない。一旦片付けて母さんたちが帰ってきてから聞いてみるか。



「って、なんだあれ?」



 本棚に本を直そうと思い片付けているとなんか奥に1冊だけ本が隠されていることに気づいた。

 俺は、それに手を伸ばし取ってみると表紙にアルバムと書かれていた。



「あった!アルバムだ!なんでこんな奥に隠してるようにあるんだろ?」



 俺は、ようやく見つけたアルバムをワクワクしながら開いた。

 そこには子どもの頃の俺が………



「あれ?これって俺じゃなくね?」



 1ページ目に写っていたのは産まれたばかりの麗華だった。

 もしかして、麗華と俺の分って分けてるのか?

 いや、こんなに探して1冊しかなかったんだ。俺が産まれた時は、なんかの理由でカメラがなかったのかもな。

 俺は、そう結論づけて次のページをめくる。

 そこに写っていたのも麗華、次のページも、その次も。

 おかしい……俺が写ってる写真が1枚もない。

 …………それにこれ、家族写真だよな。…………俺がいない。もしかして俺、家族のみんなからハブられてるのか?家族全員からいじめられてる!?

 は、ははっ、ま、まさか。

 ………でも、待てよ。俺、この歳の麗華、見た覚えないぞ?

 写真に写っていたのは5歳くらいの麗華。麗華の面影はあるから麗華って分かるけど………俺の記憶にこんな姿の麗華は……ない。



「ど、どういうことだよ!」



 俺は、不安と焦りを覚えながらアルバムのページをめくる。

 ページをどんどんめくるが俺が写ってる写真は1つもない。

 そして、麗華が中学への入学式の写真を最後にアルバムは終わっていた。

 結局俺の写真は一枚もなかった。



「っ!がっ!……うっ!」



 急に頭が割れそうなほどの頭痛が俺を襲い俺は、その痛さに頭を抑えて苦しむ。



「な、なんだ!……っ!うっ!」



 それに何だか俺の知らない記憶が頭の中に入ってくる。

 ………い、いや……し、知ってる?



「……うっ…………………」



 俺は、頭痛に耐えきれずその場で倒れ込んでしまった。



 麗華side



「急に降ってきたね〜。」

「もう少し早く降ってきたら陽一に傘を持ってこさせたのに。」



 私とお母さんは、デパートから帰る途中、急な雨によって走って帰るハメになった。

 そして、家に着くと私たちはまず、洗面所に行ってタオルで頭や体を拭く。



「こりゃ、一旦お風呂に入ろうかしら。麗華、先に入る?」

「ううん、私、お兄ちゃんにお土産渡してくるから先に入ってて。」

「そう?分かった。本当にあんた、陽一のことが好きよね〜。」

「っ!い、いいじゃない!だって私たちは………」

「はいはい、ほら、早く陽一のところへ行ってあげなさい。」

「も、もう、お母さんったら。」



 私は、洗面所から出てお兄ちゃんの部屋に行く。

 お兄ちゃん、このお土産喜んでくれるかな。

 お兄ちゃんに買ってきたお土産とは少し高めのクッキー。私のお小遣いで買ってきたのだ。

 私は、お兄ちゃんの部屋の前に着いて一旦深呼吸してから心を落ち着けてドアをノックする。いつもならここでお兄ちゃんの返事がするのだけど……



「お兄ちゃ〜ん、私だけど…」



 そう言っても返事がないから思いっきってドアを開けてみるとそこには誰もいなかった。



「トイレかな?」



 私は、お兄ちゃんがトイレにいると予想してトイレの方に向かうとトイレの電気がついておらず誰もいないことを教えてくれた。

 出掛けたのかな?ううん、そんなはずがない。お兄ちゃんの靴は確かにあった。

 なら、どこにいるんだろ?

 私は、家の中を歩き回りお兄ちゃんを探していると一部屋だけ明かりがついてる部屋があった。

 私は、その部屋へトコトコと歩いてお兄ちゃんに声をかける。



「お兄ちゃん!ここに居た……ん……だ?………っ!」



 その部屋を見てみると辺りは、本が散乱しておりそして、中央にはお兄ちゃんが苦しそうに倒れていた。



「お兄ちゃんっ!」



 私は、お兄ちゃんのそばに駆け寄るとお兄ちゃんは、苦しそうな声を上げていた。

 ど、どうしてもこんなことに………



「っ!?」



 私がお兄ちゃんがこうなった原因を探すとすぐそばにアルバムと表紙に書かれた本があった。



「も、もしかして……お兄ちゃん……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る