第49話 気づけば日が昇っていました

「本当はね!あれは私の事なの!」



 優奈が顔を真っ赤にして俺にそう告白してきた。

 俺は、少しの間何も喋れなくなる。そして、ようやく口から出た言葉は………



「………ま、マジか!優奈、好きな人がいるのか!?」

「…………………え?」

「だって、あの話が優奈のことって言うならお前に好きな人がいるってことなんだろ?誰なんだ?」

「え?え!?」

「いやぁ〜、あの優奈に好きな人がいるなんてな〜。初めて知ったよ。」

「ち、ちが……よ、陽一君!?それ、ごか……」

「分かってる、分かってる。誰にも言わないで欲しいんだろ?安心しろ、俺、口は硬い方だからな!」

「そ、そういうことじゃ……」



 と、そこで俺のスマホが鳴る。

 画面を見ると麗華からの着信だった。



「悪いな、ちょっと電話が掛かってきた。」

「あ……う、うん……どうぞ……」



 俺は、優奈の許可を得て電話に出る。

 すると麗華は、少し不機嫌そうな声で話してきた。



『お兄ちゃん、今どこにいるの!?』

「どこって……公園にいるけど?」

『公園にいるけど?じゃない!早く帰ってきて!』

「ど、どうしたんだ、なんでそんなに怒ってるんだ?」

『なんの連絡もなくこんな時間まで出歩いているんだから心配するに決まってるでしょ!?』

「え?こんな時間?………ってもうこんな時間なのか!?」



 俺は、時間を確認するともう日にちが変わる5分前だった。



『とにかく早く帰ってきて!』



 と、怒鳴られ電話が切れた。

 これは帰っても怒られそうだな。まぁ、俺の方はいいや。問題は、優奈の方だ。



「優奈、もうこんな時間だし帰ろうか。七海さんもいくら俺を信用してるからって言っても心配するだろうし……もし、こんなところ、好きな人に見られたら誤解するだろ?だから、帰ろう。」

「だから違っ……」

「いいから、本当にもう帰るぞ!遅くなれば遅くなるほど麗華に怒られる!」

「っ!」



 俺は、優奈の手を繋いで走る。優奈もゴチャゴチャと言っていたが俺が手を繋いだらすぐに黙って俺に付いてきてくれた。

 それから俺は、数分で優奈の家に着いた。だが、もう日は変わってしまっていた。

 俺と優奈は、呼吸を整える。



「はぁはぁ……優奈、ごめんな。こんな遅くなってしまって。」

「はぁはぁ……う、ううん、ありがとう、送ってくれて。」

「いや、構わないよ。あと、七海さんと人志さんに謝らないと。」

「い、いいよ!大丈夫だから!それにお母さんたち、絶対に変な誤解しそうだから……」

「誤解?でも、やっぱり謝っておかないと。」

「ほ、本当にいいから!大丈夫!それよりも陽一君も早く帰らないと麗華ちゃんに怒られるんだよね?なら、早く帰らないと!」

「………で、でも……」



 俺がだいぶ渋っていたら優奈の家の玄関が開いた。



「もう〜、誰〜?………って、優奈と陽一君?………あらら〜、二人とも、こんな時間に帰ってきてどうしたのかしら〜?」



 玄関から出てきたのは、眠そうな七海さんだった。だが、俺らを見るとなぜかすぐにニヤニヤとした顔になった。

 俺は、すぐに七海さんに向けて頭を下げた。



「すいませんでした!」

「え!?どうしたの、陽一君?」

「こんな時間に優奈を帰宅させてしまって!本当にごめんなさい!」

「あ〜、なんだ、そんなこと。もう、そんなこと気にしなくていいのよ。陽一君なら朝帰りでもいいくらいよ。」

「お、お母さん!何言ってるの!?も、もう、こんな時間なんだし騒いだら近所の人に迷惑だからもう家に入ろ?ね!?」

「こ、こんな時間に陽一君一人で帰らせるのは危ないわよ?泊まらせたら?」

「い、いいですよ!それに麗華が、待ってますから。」

「あ〜、麗華ちゃんか〜……なら、早く帰った方がいいわね。良かったら送ってあげよっか?」

「大丈夫です、走って帰りますから。本当に今日はすいませんでした。」

「いいのよ、逆にここまで娘を連れてきてくれたんだからこっちが謝らないといけない立場なのよ。」

「別に気にしないでください。こんな時間まで気づかなかったのは俺なんですから。それじゃ、俺はこれで。」

「いつかお礼したいからうちに来てね!それじゃ、気を付けて帰るのよ〜。」

「じゃあね、陽一君。」

「さようなら!」



 俺は、一礼して走って帰って行った。優奈の家からは結構近いので走れば5分も掛からなかった。

 だが、玄関の前にはいつも通り麗華が待っていた。ものすごい怒ったような表情をして。



「た、ただいま〜………」

「……………」

「れ、麗華、待っててくれたのか。」

「……………」

「ははっ、ごめんな、遅くなって。」

「……………」



 麗華は、俺が話しかけてもずっと黙っている。この時の麗華は、どことなく父さんに似ていて怖い。



「お兄ちゃん、そこに座って。」



 麗華が口を開いたと思ったら急に下駄箱のところに座れと言われた。



「あ、あの……せめて家に上げてはもらえないでしょうか……」

「私は、座ってって言ったんだけど?」

「…………………はい」



 俺は、麗華の威圧に負けその場に座る。

 そして、そこから麗華のお説教が始まり気づけば日が昇っていた。

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