第48話 相談に乗ってあげました

「いやぁ〜、もう外も真っ暗なのに暑いな〜。」

「うん……」

「………今日の花火、すごいキレイだったよな!」

「うん……」

「………そろそろ帰るか?」

「う……あっ!だ、ダメ!ま、まだ帰らない!」

「そうは言ってもなんかお前、心ここに在らずって感じがしたぞ?大丈夫か?」

「うん、ちょっと色々考えててね。」

「なんか悩みだったら俺が聞くぞ?」

「ううん!大丈夫!」

「そうか?なんかあったら遠慮なく相談しろよ?」

「う……うん……ありがとう……」



 優奈は、もう大丈夫と言っていたが全くそうは見えない。また、一人で考え込んでしまった。時々、電柱にぶつかりそうになるなど危ないこともあった。



「ったく、何考えてんだか知らないけどよ、とにかく歩いていたら危ないからあそこのベンチに行くぞ。」

「……うん……ありがとう、気を使ってくれて。」



 俺たちは、公園に設置されていたベンチに座った。そこでまた優奈は、考え込むように下を向く。



「優奈、今さっきも言ったが俺に力になれることはないか?今日の散歩ももしかしてそのことを相談したくて誘ったんじゃないのか?」

「っ!あ、いや……その……ちが……わないけど……」

「なら、相談してくれ。それとも俺じゃ相談相手にしたくないか?」

「ううん!そんなことないよ!で、でも、陽一君になんだか悪いと思って……」

「はぁ、いつ俺がお前の相談相手になるのが嫌とか言った?それよりも相談相手にしてくれって言っただろ?優奈には勉強のこととかで色々と迷惑掛けてんだから気にせず俺を頼ってくれ!」



 優奈は、そんな俺の目をチラッと見るとすぐに反らした。



「う、うん……ありがとう……なら、一つ相談に乗ってくれるかな?」

「ああ、任せてくれ。」

「………これはね、友達の話なんだけどね……その友達にね幼い頃からずっと好きな人がいるんだって。でも、勇気を持てず告白することがずっとできていないらしいの。でも、それももう限界らしいの。その人と隣にいるだけじゃ嫌みたい。その人の特別にして欲しいんだって……って、私の友達が言ってたの。やっぱり勇気を持って告白することを勧めるべきなのかな?」


 あ〜、優奈の考え事って恋愛系の話なのか〜。そりゃ俺に相談なんてしずらいよな。まっ、でも、相談してくれたんだしちゃんと考えて応えてあげないとな。



「う〜ん………俺だって恋愛なんかしたことないからよく分からないけど………一つ聞いていいか?」

「何?」

「その友達の男には好きな人っているのか?」

「あ……ど、どうなんだろう……たぶんだけど……いないと思う……」

「いないのか。それなら、告白するべきだな。」

「っ!や、やっぱりそう思う!?」



 優奈は、急に顔を近づけそう言ってきた。



「あ、ああ、そりゃそうだろ。好きな男に彼女がいない時に告白しないでどうする?もし、その男がその友達のことを好きじゃなくてもたぶん告白されたら少しは意識するだろ。まぁ、告白なんてされたことないから分からないが、ははっ。」

「う、うん……そうだよね……やっぱり勇気を持って告白すべきだよね!………じゃ、じゃあ、もう一つ聞いていい?」

「なんだ?」

「よ、陽一君なら告白されるならいつがいいとかあるのかな?」

「お、俺!?別に俺の意見なんていらないだろ!」

「い、一応だよ!一応!男の子の意見があった方が友達も喜ぶと思うんだ!それで、いつがいい?」

「お、俺なら……いつでもいいかな……告白する人が真剣なら俺は、ちゃんとそれに応えるつもりだ。」

「っ!ほ、本当!?」



 優奈は、今さっきよりもさらに顔を近づける。もう鼻の頭が当たってもおかしくないくらいだ。それほど優奈は、真剣なのだろう。

 俺もそれに応えなくちゃな!



「ああ、俺は、真剣な告白ならどんな時でも嬉しいぜ!その人が俺の好みの女性じゃなくてもだ!」



 まっ、でも、幼女が許嫁とか言う告白はやめてもらいたいけど……



「陽一君!ありがとう!友達にもそう言っておくね!」

「ははっ、頼りになれたのなら何よりだ。それじゃ、そろそろ帰るか?」

「あ……えっと……もうちょっとこのままでもいいかな?」

「なんだ、まだ相談があるのか?」

「う……うん!………あのね、陽一君、陽一君って好きな女の子とかいるのかな?」

「好きな女の子?いや、別にいないけど……」

「そ、そうなんだ………」



 優奈は、体を離して少し顔を赤くさせる。だが、急に顔を横に振りなにか決心したような顔で俺の方を向いてきた。



「よ、陽一君、今日はわざわざこんな夜中に付き合ってくれてありがとね。」

「いいよ、これくらい。」

「はぁ〜……ふぅ〜……陽一君、今さっき、友達のことを相談したでしょ?」

「ん?ああ、そうだな。」

「その……友達っていうのは………本当は……う、嘘……なの……ほ、ほ、ほ………」



 さっきの友達の相談のことが嘘?どういうことだ?なら、なんであんなことを相談してきたんだ?

 優奈は、何度も噛みながらだが俺になにか伝えようとしてきた。



「本当はね!あれは私の事なの!」



 優奈は、顔を真っ赤に染め上げてそんなことを告白した。

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