第34話 旅行から帰ってきて
「旅行に誘っていただき本当にありがとうございました!とても楽しかったです!」
「いやいや、気にしなくていいよ。陽一君が楽しんでくれて僕も嬉しいし、それに陽一君が来たことで僕たちもいつもよりもさらに楽しめたよ。ありがとう。」
俺は、沖縄から帰ってきて静香たちと別れる前にちゃんとお礼を言った。
本当に今回の旅行は楽しかった。静香とも結構仲がよくなれたと思うし。
「このお礼はいつか絶対にしますね。もう遅いですね。そろそろ帰ります。」
「もうそんな時間か。ごめんね、こんな時間まで引き止めてしまって。」
「いえいえ、それじゃ………あ、その前に静香、ほら。」
「え?何、これ?」
「お土産売り場で静香、それ、ずっと見てただろ?」
「っ!それってもしかして……」
静香は、目をキラキラさせて俺があげた袋を見る。だけどさすがにここで袋を開けて見るようなことはしない。やっぱりここは大人っぽいな。でも俺的には子どもっぽいところを見せて欲しかったけど。まぁ、静香はこういう子だよな。
「それじゃ、俺はそろそろ帰りますね。」
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
「ん?どうしたんだ?」
静香に急に引き止められたと思ったらすごい顔を赤くさせモジモジしている。
「えっと……その……ありがと……」
「っ!お、おお……気にすんな。」
なんかすごいモジモジしてるからこっちも照れてしまったじゃないか。
「陽一君、本当にありがとうね。じゃあ、また今度、そう遠くない内に会いましょ。」
「あ、は、はい。そうですね。それでは、今度こそ本当にさようなら。」
「うん、じゃあね。」
「さようなら〜。」
「………またね。」
みんなからお別れの挨拶を受け俺は、家へと帰って行った。
そして、帰ってきて待っていたのは玄関で眠っていた麗華だった。
「ただいま〜……ってどうした!?」
「おかえり〜。結構遅かったわね〜。って……」
「れ、麗華?な、なんでここで眠ってるんだ?」
「この子ったら夕食を食べたあとからずっとここであんたを待ってたのよ。それであまりにも遅いから眠ちゃったのね。」
「そ、そうなのか。」
俺の家ではだいたい6時くらいに夜飯を食べる。今は、もう12時を過ぎようとしているから、6時間くらいずっとここで待ってたってわけか。
なんか凄い罪悪感があるんだが……
「ったく、毎日、毎日、こうやって待ってくれてるなんてな。」
俺は、そう言いながら麗華をお姫様抱っこして部屋のベットへと運んだ。
ははっ、昔はこうやってよく抱っこしてたんだよな。懐かしい。
「いつか麗華にも好きな人が出来てお嫁に行くんだろうな。ははっ、ちゃんと笑顔で送れるか心配だな。もしかして今、彼氏とか居たりするのかな?それだったらこういうのももうやめた方がいいよな。」
俺がそこまで言って麗華をベットに置き部屋を出ようと思った瞬間、服の裾が引っ張られた。
「ん?なんだ、麗華、起きてたのか。」
「………居ないよ……」
「え?何が居ないんだ?」
「だ、だから……彼氏とか居ないから……」
「え、あ、ああ、そういうことか。」
「……うん……それだけ!おやすみ!」
麗華は、真っ赤にした顔を見せないようにと布団を頭の上まで被った。
全く、照れ屋なんだから。
でも、起きてたんなら早く言ってくれたらよかったのにな。俺なんかにお姫様抱っこなんて今さらされても嬉しくないだろうに。
まぁ、そんなことを思いつつ俺は、麗華にお別れの言葉を告げた。
「ああ、おやすみ。あ、あと、お土産買ってるから明日渡すな。」
「うん、ありがとう。」
俺は、麗華の返事を聞き部屋を出て行った。
ん〜、俺もそろそろ寝ようかな。その前に風呂に入らないと。
俺は、そう思いパパっと風呂に入り部屋へと戻ろうとした。
だが、そこで母さんに呼ばれてしまった。
「あんた、ちょっといい?」
「ん?何?」
「旅行、楽しかった?」
「ああ、楽しかったよ。みんな、俺の気負いなく接してくれたから。」
「それは良かった。そのみんなってもちろん、静香ちゃんは入ってるのよね?」
「ん?まぁ、そりゃな。」
「随分と仲良くなったんじゃない。それでもまだ許嫁になろうと思わないの?」
「………そりゃ、そうだろ。まず、静香が嫌がってるんだから。」
「………あんたはまだ分かってないのね……」
「っ!なぁ、旅行先で和博さんにも言われたんだが俺、なにか昔のことを忘れてないか?……それもすごい大事なこと。忘れちゃいけない記憶なのに忘れていること。」
「…………それは私たちの口からは言えないわよ。あんた自身で気づかなくちゃ。」
「………分かった、色々と調べてみる。」
「そうしなさい。引き止めて悪かったわね、おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」
母さんは、俺におやすみと言ってから寝室へと戻って行った。
俺も色々と気掛かりが多くあるが今は、眠気が勝ってしまい自分の部屋に戻りベットに横になった。
それからすぐに眠りについた。
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