第14話 幼なじみの手作りケーキ

 優奈がケーキの準備をし終えるまで七海さんと話をしながら待つ。

 昔は、結構優奈の家に遊びに来ていて七海さんとも喋っていたがここ最近では全く七海さんとは会わなくなったのでさすがに緊張する。







「ふふっ、陽一君ったら緊張してるの?昔は、私とも結構遊んだでしょ?」

「ははっ、そ、そうですね……懐かしいですね。」

「本当に懐かしいわね。………っね、ひとつ聞いてもいい?」

「はい?なんですか?」

「陽一君のお母さんから聞いたんだけど………陽一君、許嫁出来たんですって?」

「ぶっ!?」









 俺は、唐突な七海さんの問に飲んでいた紅茶を勢いよく吹いてしまった。









「あらら、大丈夫?」

「す、すみません……で、あの、その、その許嫁のこと……優奈には?」

「まだ言ってないわよ。それに私もまだ詳しくは知らないんだし。」

「そ、そうなんですか。」







 俺は、七海さんからそう聞き心の底からホッとする。








「それで、相手はどんな人なの?可愛い?綺麗?優しい?それとも怖い?」








 七海さんからすごい質問攻めをくらう。

 さすがに本当のことを言えるわけがないので少し誤魔化すように七海さんに伝える。






「ん〜………なんと言っていいか………怒りっぽいですが実は結構優しかったり?するところがありますね。容姿は………まぁ、可愛い……」

「へぇ、そうなんだ。」







 決して嘘はついていない。静香は、ツンデレだし幼い感じでまだまだ可愛らしい。








「………ねぇ、ズバッと聞くけどうちの娘とその子、どっちが陽一君の好み?」

「ぶっ!」







 本日二度目の紅茶吹き。

 七海さんは、本当にズバッと聞くから油断出来ない。







「ど、どっちって……」

「ん〜?どっち?」

「………ま、まだ優奈の方が親しいので……その、好意を抱くのだとしたら優奈の方でしょうかね?」

「あらまぁ!本当!?良かったわぁ!あんな子でよければいつでも貰ってね!その時は私からもあなたのお母さんに何とか説得するから!」

「あ、あはは〜、ありがとうございます。」








 そこで一区切り着いた後、優奈が三人分のケーキを持ってきた。







「お待ちどうさま。はい、これがお母さんの分。これが陽一君の分ね。」

「ありがとう、優奈。」

「………ふふっ」








 七海さんは、少し顔をニヤつかせながらこちらを見てくる。









「な、なに、お母さん?私の顔にクリームでもついてる?」

「いいえ、そうじゃないわよ。………ふふっ、良かったわねぇ優奈。」

「な、何が?」

「ふふっ、いいからいいから。」

「…………ねぇ、陽一君、今さっきお母さんと何を話してたの?」

「い、いやぁ〜、なんでもないよ。ただの雑談だ。」

「本当に〜………怪しいな。」

「ははっ、あはは〜」








 優奈は、怪しげな表情でこちらを見てくる。

 ………今さっきまであんな会話をしていたのでさすがに恥ずかしい。










「………ゆ、優奈!このケーキ、すっごい美味そうだな!」

「え?あ、うん、ありがとう。遠慮せずに食べて。」

「う、うん、いただくよ。」








 俺は、フォークを片手に持ち「いただきます」と言ってからケーキを一口サイズに切って口に入れた。









「っ!やっぱり優奈のケーキはすっごい美味いぞ!それに久しぶりだからなお美味く感じる!」

「そう?良かった。じゃ、私も。いただきます。」








 その後、三人で雑談しながらケーキを食べた。

 そして気づけばもう日が傾きかけて空がオレンジ色に染まっていた。








「うわっ!やべぇ!そろそろ帰らないと、麗華が心配する!ってか多分もうしてる!」









 予想通り、俺のスマホには麗華からの着信が数件あった。

 俺は、いつも学校の時は電源をオフにしてバックに入れているから全く気づかなかった。

 これなら最初に優奈の家に寄るって伝えとけば良かった。










「ふふっ、麗華ちゃんも相変わらずだねぇ。」

「早く帰ってあげたら。麗華ちゃん、心配してるんでしょ?」

「ああ、悪いな。ご馳走になって。今度、一緒に出掛けてなんか俺がご馳走してやるから。」

「い、いいよ、別に!私から来てって頼んだんだから!」

「いや、絶対にするからな!それじゃ、俺はそろそろ帰るんで!七海さん、優奈、お邪魔しました!」









 俺は、そう言って優奈の家を出て行った。








「ふふっ、良かったわね、陽一君からデートのお誘いが来て。」

「〜っ!ち、違うもん!よ、陽一君はただ今日の恩返しってだけ考えてるんだもん!」

「まぁ、陽一君はそうだろうね。だから、あんたがそこら辺はハッキリさせなさいよ。」

「…………うん………」









 帰宅後、俺は麗華にすっごい怒られたのだった。

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