番外編 日米野球1946



 昭和二十一年 秋 東京 後楽園球場



 まだ講和発効前ではあったが、日本野球連盟とMLB組織が休戦直後より話し合いを進め、戦後初の日米野球が早くも実現された。

 MLBからはジョー・ディマジオ、ジョニー・ペスキー等のスターが来日し、沢村栄治や石丸進一らと対戦するとあって、普段は大学野球や甲子園しか見ないような日本の野球ファンも大いに沸いていた。



『さあ、昭和九年以来十二年ぶりの日米野球。先攻は大リーグ選抜。日本の先発はエースの沢村。まもなくプレイボールです』



 執務室でラジオに耳を寄せて、中継を真剣に聞く高野五十六総理大臣を、佐武は微笑で見つめる。



「総理、そんなに近くで聞いてたら耳がおかしくなりますよ」



「いやはや、本当は生で見たかったが、こうしてラジオで聞くしかないからな。一刻も聴き逃したくはないのだ」



「子供みたいですね」



「男ってのはいつまでも少年のままなのかもな」



「ですな」



 そう言って笑い合い、ラジオ中継に耳を澄ます二人であった。




 これより数時間後、試合は日本の負けで終わったものの、エース沢村の好投等もあって戦後初の日米野球は大いに盛り上がり、更に日本国内での職業野球の注目度を上げる結果となったのであった。









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