休戦成立




 昭和二十八年 夏



 日韓満中からなる東亜連合軍とソビエト赤軍との戦争は両陣営、一進一退の攻防を続け、なかなか決着が付かずにいた。

 そんな折、日本の内閣総理大臣吉田茂は外務省を通じ、米国へ休戦の仲介を依頼。

 軍部内反共強硬派の日本軍への原爆提供の申し出に内心困っていたアイゼンハワー大統領は日本の申し出を快諾し、日韓満中ソの国境を開戦前の線に戻す形で休戦は成立した。

 なお、戦争による民間への被害について、補償等の議論が行われたが、平行線のまま休戦後も各国間で交渉される事となった。



「ええ、あくまで休戦という形ではございますが、最終的解決、完全講和へ向けての努力はこれからも続けて参ります」



 吉田総理が記者達の質問に答える。



「総理、今回の戦争で爆撃等によって被害に遭われた国民への補償等はどうなっているのでしょうか?」



「えー、そうですな。現在、政府として大蔵省と交渉し、目下調整しておるところであります」



「総理、講和に向けて努力をと仰いましたが、政府として具体的にはどのようにソ連側へ働きかけを行うのでしょう?」



「譲るべきところは譲り、守るべきは守る。これは韓国政府、満州政府、中国政府との共通見解であります」



「総理、そもそもソ連の不意打ちから始まった戦争であるのに、我が国が譲るべきところというのは?」



「我々はかつての帝国主義による領土拡張戦争をしているわけではなく、あくまで守の、本来の国を守るという意味の戦いをしておるわけです。ですので、名を捨てて実を取る。そういうわけであります。実際、我が国は満州の権益を手放して満州国は名実共に独立しましたが、その満州との貿易による経済効果はかなりのものがあります。目先の利益ばかりに囚われ、真の目的を見失ってはいかんという事であります」



 そして、いくつか質問に答えた後、吉田総理は官邸の執務室へ戻って行った。


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