初恋の記憶は秘密

璃央奈 瑠璃

 初恋。私の横に彼はいつもいてくれた。

 

 小学生のころ私は少しいじめられていた。陰湿なものではなかったが、仲の良かった友達に無視をされたり、男子が私を見てひそひそ話している、その程度だが、幼心にすごく傷ついたのを覚えている。でも彼はいつもと変わらずにいてくれて。そのせいで女の子から嫌なことを言われ、男子の友達もいなくなってしまった。それでも。彼の背中はいつも大きく感じられて私は守ってばかりいた。 


 ずっと一緒にいるんだって甘えてた。うん。甘え。でもかわいいって欲しくて美容院に行って茶髪のロングにしてみたり、化粧もできるようになって。

 でもそれは自己満足でしかなかった。彼はそういう細かいところに気がついて「似合ってる」と「きれいになったね」なんて言ってくれたけど、それはどの女の子に言って上げてる、私は特別じゃなかった。


 でも程々の距離で接している私は満足していた。ご飯を作れば「美味しい」と言ってくれて、重い荷物をさり気なく持ってくれたり。


 そんな私のことを彼が追ってきてくれるはずない。

 そんなことを考えていると……。瞳には涙がいっぱいになった。でも泣かない。泣いてすがってそんなことしたくない。


 私って本当にバカなんだな。だって……。

「美姫!」

 って寒さで冷えた両手を包んでくれる彼が私の目の前にいるから。それだけで我慢してた涙がボロボロとこぼれて。


 合図も声も必要ない。


 だからふたりでこの世界で一番幸せを感じてキスをした。

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初恋の記憶は秘密 璃央奈 瑠璃 @connect121417

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