箱庭ノ傍観屋
シノノメヨシノ
prologue 白い世界に表れた文字列
(何もない白い壁に、流麗な文字の羅列が浮かび上がる。)
改めて…ようこそ、『 箱庭ノ傍観屋 』へ。
僕は、この何もない箱庭の住人であり管理人…つまり、神。
ごめんね、名前はないんだ。ずっと、この箱庭には僕一人しかいなかったから。
この手紙を君が読む頃、君は僕を何と呼んでくれているのかな。
…相変わらず御主人様って呼んでいるのかい?
うん? 『箱庭』って何かって…?
そうだな…君にもわかるように言い換えるとしたら、『世界』だろうか。
規模が大きい? ああ、その通り。規模の大きい話さ。
ここの他にも沢山の神がつくりだした箱庭があるんだ。君の住んでいるところも、その一つ…そう考えてくれていい。
ひとつひとつの箱庭は独立しているけれど、僕の世界にある水晶はそのすべての箱庭の情景を映し出すんだ。僕は、それを眺めることくらいしかできない。
それは、きっと僕と一緒に過ごしていれば気付いただろうね。
泡沫……水面に浮かんでは消える、そんな儚い箱庭の世界を傍観するのが、すべてを観る神である僕の仕事。
ああ、さっき僕に名前はないといったけれど、他の神からは『
君は僕のことをどういう風に聞かされていたのだろう? がっかりしたかもしれないけれど、君が見たものが本当の僕の姿だし、僕の日常だ。
誰からも好かれない、誰かを監視している自分。
何のために、誰のために、そんなことは、もうどうでもいい。
自分にできる唯一のことだからね。
そんな僕のもとに、君が送られてきた。
君には、大切なものが欠けていた。
だから、僕はそれを、君に贈りたいと思ったんだ…。
君が僕を殺めるために贈られたのだとしても…
きっと、最後の時も変わらず思っているだろう。
僕の箱庭に来てくれて、ありがとう。
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